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270回 対抗手段があっても面倒なのが変わるわけではない勇者という存在 5

 そんなタツハルは早速行動を開始する。

 まずは教会の関係者にイエルの声について伝えた。

 それから教会からの協力をあおいだ。

 承諾した教会の者達により、必要な措置や準備がすすめられていく。



 それから数日。

 タツハルは難民達の中にいた。

 ユキヒコ達によって居場所を失い、消えない傷をつけられた者達だ。

 かつてタツハルもその一人だった。

 そんな彼らに向けて、タツハルは声をあげる。



「みんな!」

 呼びかけ。

「俺は女神の声を聞いた!」

 その声は居合わせた者達の耳に届く。

 しかし心には触れられない。

 誰もが声のする方に目を向けるも、その目は死んでいる。

 それでも構わずタツハルは声をあげていく。

「魔族に色々奪われた俺に、女神は声をかけた」

 だから何なのかと無言の民衆は問う。

 それが自分らと何の関係があるのかと。

「この俺に力を与えようと。

 奪われたものを取り戻せと」

 それを聞いて何人かが反応を示した。

 まだ小さなものだが。

「その為の力を与えようと。

 そして俺は力を授かった」

 そして勇者になった。

「全ては敵を討つために」

 女神イエルが求めたのはそれだった。

 大きな脅威が育っている。

 それを倒せと宣った。

「そして、魔族から解放せよと」

 奪われた土地を。

 失った尊厳を。

 人としての人生を。

「俺たちの生きてきた場所を。

 俺たちの生き様を。

 そこにあった俺たちの人生を」

 言われて誰も思い出す。

 決して楽では無かった生活を。

 しかし、今よりはマシな日々を。

 魔族が踏みにじっていったものを。

 奪っていった大事な者と物を。

「女神イエル様は言われた。

 あなた達のものなのだ、あなた達がその手で取り戻すのだと」

 その声に、誰かが無言で頷いた。

 一筋の涙を流すものがいた。

 無くした表情を取り戻す者がいた。

 全部がそうではなかったが、何かを取り戻す者は確かにいた。

「行こう!」

 声が張り上がる。

「俺たちの居た場所に。

 俺たちの場所に。

 その為の力を俺は授かった。

 皆と共に進む力を」

 それが勇者としての力だった。

「みんな!

 行こう。

 のさばってる魔族を倒しに。

 俺たちの居場所を取り戻しに。

 奴らをたたき出すために!」

 その声に何人かがひきつけられた。

「行こう!」

 呼びかけ。

 返事は無い。

 だが、胸の中で決意を固めた者達はいた。

 それらは呼びかけを終えたタツハルの所へと向かう。

 つられるようにその後により多くの者が続く。



 こうしてタツハルに従う者が集まっていく。

 故郷の奪還の為に。

 そして集まった者達は更に他の者に呼びかけていく。

 俺たちはタツハルについていくと。

 このままここで朽ち果てたくはないと。

 ここで腐っていくくらいなら、敵に立ち向かうと。

 その熱意にほだされ、更に多くの者が奪還のために参入していく。

 一ヶ月もする頃には、その人数は万を超えた。

 更に三ヶ月もする頃には、避難民のほとんどが参加者になっていた。

 どうしても踏ん切りがつかない者や、体の損傷が大きすぎてまともに動けない者を除いて。

 それらは決して優秀な兵士とは言えない。

 だが、数だけはそれなりにいる。

 それらがまとまって進軍すれば、それなりの戦力にはなるだろう。

 有象無象の群であったとしても。



 その者達が付け焼き刃の戦闘訓練を終えた頃。

 彼らは進軍を開始した。

 タツハルが勇者になってから一年近く経った頃。

 彼らが故郷を失ってから一年半が過ぎようとしていた。



 その動きはソウスケによって逐一報告されていた。

 概算ではあるが、軍勢の規模や装備の状態。

 一人一人の能力と訓練の具合。

 彼らの作戦など。

 何より、タツハルが得た加護の内容も。

 更に規模を拡大していたソウスケの諜報網は、そういった事すらも丸裸にするほどに成長していた。

 それだけ信用信頼される商人として活動し続けた。

 まともにうごけない難民達も可能な限り採用していった。

 そうした者達を通じて、内部事情などを聞き出していった。



 それをもとに対抗策が練られていった。

 迫る軍勢に対抗できる兵力と装備。

 構築していく防衛陣地。

 敵を撃退するための作戦。

 後方のヨウセンにも支援を仰ぎ、物資や作業員の確保をしていく。

 全ては敵の侵攻に備える為に。

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