259回 他人任せだけではない、自分も強くならねばならぬ 2
簡単な事ではない。
世界や宇宙は人間一人より巨大で広大だ。
その奥底にまで向かう、根源を知るのは不可能に思えるほどだ。
それでもユキヒコは拡大した能力を用いていく。
知覚できる全てに触れていき、それらがどういったものか考える。
それは見るというより観るという行為になっていく。
たんにそこにあるものを捉えるだけではない。
それがどういったものか、どういった性質なのかを見つけていく事になる。
その積み重ねが、更なる深奥を探る手がかりになっていく。
その為に能力を拡大し続ける。
常人を超えたそれらによって、目に見えぬ何かを察知していく。
手にした情報の処理能力をあげていく。
限界まであげた能力であらゆる事を知り、理解していく。
その繰り返しがユキヒコに新たな何かをもたらしていく。
それでもまだ、本質的な部分に到達することはかなわない。
世界や宇宙はそれほどに広大だった。
(もう少しあげないと駄目だな)
能力を解放しながら考える。
今の知覚能力は処理能力でも人間の範囲を超えている。
世間一般では天才や化け物と言われるほどの能力に到達している。
それでもなお世界に満ちる気の流れ、世界の在り方を知るにはほど遠い。
今少し能力値を解放し、その状態で世界をとらえていかねばならない。
時間をかければ、それでもいずれは何かを知ることにはなるだろう。
だが、その時間を少しでも短縮したい。
(……やるか)
腹をくくる。
能力解放の上限。
肉体の崩壊と復元の釣り合う限界を超えていく。
拡大した能力が更に多くの何かを察知し、それが何であるのかを理解していく。
今まで以上の速度で。
代わりに、肉体の崩壊が進んでいく。
復元もしているが、その速度は崩壊にわずかにおよばない。
その為、徐々に体が崩壊していく。
その痛みが襲ってくるが、それでもかまわず探知探求を続けていく。
生命の維持の危険になる寸前まで。
さすがにこれ以上の崩壊は危険という段階まで進んだところで、解放した能力を制限。
崩壊した肉体の修復に気力を回していく。
破壊されてボロボロになってた体が、瞬時に復活していく。
崩れていった指先が、ひび割れていた表皮が、垂れ流されていた血や体液が。
失われていた細胞も復活し、何事も無かったかのような状態になっていく。
それが終わってもとの状態に戻ったところで、ユキヒコは大きく息を吐く。
端から見てれば、単に数分ほど座っていただけ。
そう見えただろう。
だが、その数分で通常ではありえない程の発見と分析が行われていた。
そして、様々な事を理解していた。
それだけのユキヒコの知識や技術は格段に向上していく。
能力そのものに大きな変化はないけども。
知識や技術の伸びに比べれば。
だが、それすらも本来ならありえない程の伸びを示している。
気力の増大、つまりは霊魂の成長にあわせて。
更に言うならば、肉体の再構成にあわせて、体が霊魂に沿って再構成された為に。
それによりユキヒコの肉体も、以前よりは向上していっている。
そんな事を日夜繰り返していく事で、ユキヒコは成長していく。
一般的に言う、能力や技術・知識の成長とは違った形で。
やがてユキヒコは到達する。
次の覚醒階梯に。
座しながらも多くのことを見聞きして。
己の根源を見つめつつ、世界・宇宙を見聞きして。
そして、それらが如何なるものかを知り。
それに調和、あるいは共鳴して。
世界そのものの声/振動・波動を受け取り、自らもそれらに働きかける事をしっていった。
<社ユキヒコの能力値>
体力 108 → 145
反射 114 → 152
判断 119 → 156
心意 134 → 178
教養 +76%
野良仕事 +8%
工作 +11%
動物の世話 +4%
野外活動 +23%
探索発見 +21%
→ 上記含む知識・精神系統技術 +500%
戦術 +25%
剣術 +52%
弓術 +16%
柔術 +32%
→ 上記運動・作業系統技術 +500%
『転生者』
『覚醒階梯 4 → 5』
覚醒階梯が上がったことで、出来る事の幅が更に広がった。
世界そのものと共鳴する事で様々な事が伝わってくる。
また、働きかける事で、各地に様々な事象を発生させる事が出来る。
やろうと思えば、大規模な地震を遠く離れたところで起こすことも出来る。
あるいは何日も続く台風を発生させる事も。
干からびるまで日照りを続ける事も。
いわゆる天変地異を起こすことなど造作もなくなった。
なのだが、それをやるにはユキヒコの力をもってしても難しい。
覚醒階梯の上昇と共に、解放できる能力の上限は更に増えた。
しかし、その力を十全に使っても、大規模な災害を起こすのは手間がかかる。
いざという時には使うのをためらうものではない。
だが、まだそんな状況では無いと思っていた。
それでも強力な魔術に似た効果を発生させる事が出来る。
それも、ほぼ無尽蔵に。
ちょっとした軍勢ならば問題なく葬れるだけの威力を広範囲に。
それだけでも十分な強さだった。
遠い場所に瞬時に移動出来る転移もその一つである。




