表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
255/428

255回 質が量を上回ることはない 3

「あと、クロスボウ。

 これもなるべく多く調達してる」

「ありがたいね」

 こちらもユキヒコの要望だった。

 普通に考えれば戦力になりにくいゴブリン。

 それを少しでも戦力にするために、ユキヒコはクロスボウの導入を進めていた。



 強力な弓を引くには相応の力が必要になる。

 だが、そんな力を持つ者は少ない。

 筋力に優れた鬼人族ならともかく、他の種族ではそこまで強力な弓を引ける者はいない。

 このため、飛距離を出せる程強い弓を使える者は少なく、部隊編成に難儀していた。

 それを解消するためにクロスボウの量産を急がせていた。



 クロスボウであれば、弦を一旦引き絞れば、後はその状態で固定出来る。

 そうしてからなら、誰でも射撃が出来る。

 それこそゴブリンでも難なく。

 そして、弦を引いて射撃可能状態にするのはそれほど難しくはない。

 専用の器具を使えば、弦を引く事はゴブリンでも可能だからだ。



 その分、投資の手間がかかる。

 クロスボウの作成にはどうしても技術が必要になる。

 なかなか量産出来る者ではない。

 だが、有象無象のゴブリンを戦力化出来る利点は大きい。

 そのため、それなりの投資をしてでもクロスボウの量産に踏み切っていた。

 全てはゴブリンを戦力として扱うために。



 ゴブリンの強みは数である。

 数で能力の低さを補っている。

 たとえ能力に劣るゴブリンであっても、相手の三倍の数で襲いかかれば勝ち目がある。

 そして、それだけの数を揃えられるのが強みである。

 短い妊娠期間と成人までの年月がそれを可能にしている。

 逆に言えば、それしか強みがない。

 能力においては他の種族に劣り、人海戦術による突進しか勝機が無い。

 また、大量投入による膨大な損害も発生する。

 勝つには勝っても無傷というわけにはいかない。

 比較的補充が簡単なゴブリン兵であっても、そう何度も大量突撃が出来るわけではない。

 繰り返していけば、嫌でも損失が積み重なる。

 その損失を補充するにはそれなりの時間が必要になる。

 いかにゴブリンといえども、そう無駄遣いするわけにはいかない。



 それに、ゴブリンの気持ちや意思もある。

 彼らとて死ぬことをいとわないわけではない。

 むしろ、人一倍臆病と言える気質を持つゴブリンは、他の種族よりも意気地が無い。

 そのため、ゴブリンを戦力として用いるのは難しい。

 確実に勝てるという保証を用意しない限り、簡単には従わない。

 少しでも不利とみれば、平然と敵前逃亡をする。

 そんなゴブリンを戦場に送り込む為にも、

『これくらいの数が揃ってるから大丈夫だ』

と思わせなくてはいけない。

 つまりは士気の維持の問題となる。

 実際問題、他種族と同数ならば確実に負けるほどにゴブリンは弱い。

 そんなゴブリンの意気地のなさは、種族保存の為には必要不可欠といえる。

 種族全部が壊滅せず、少しでも生き残るために。



 そんなゴブリンを少しは戦えるようにするためである。

 クロスボウによる遠距離からの射撃。

 これにより直接的な被害を少しでも減らす。

 敵が射撃をしてこない限り、損害が出る可能性は減る。

 相手が応戦能力を持たない限りは、一方的な攻撃が出来る。

 意気地の無いゴブリンでも、こういった状況ならばそれなりに踏みとどまる。



 また、大量導入する事で、一人当たりの命中率をある程度は無視する事が出来る。

 どうしてもゴブリンの能力は低い。

 そんな彼らに命中精度は求められない。

 大量に発射して、そのうちのいくつかが当たれば良いと割り切るしか無い。

 また、大量に持たせる事で、射手と装填手を分ける事も出来る。

 比較的命中率の高い者に射撃を任せ、残りの者に弦を絞り矢をつがえる役を任せる。

 一度に投射出来る攻撃は減るが、連続しての射撃が可能になる。



 そんなゴブリンの防御に、即席魔術師を使う。

 敵も射撃で反撃してくるのをみこして、風を操って矢をそらす。

 接近してくるなら、足下の地面を動かして足がはまるくらいの窪みを作る。

 目の前まで迫ってきたら、火の粉をまき散らしたり顔に水をかけて目をくらます。

 そうやって敵の接近を阻む。



 ユキヒコはそんな戦い方を考えていた。

 どこまで通用するかは分からないが、ゴブリンにはこういった役目を任せるしかない。

 一部の例外を除いて、大半のゴブリンはやはり使い物にならないような者が多い。

 その中でも本当に使えない者は、廃棄同然に前線に送り込んでいる。

 そうやって淘汰しても、残る者が有能になるわけでもない。

 ゴブリンのなかではいくらかマシというだけで、やはり能力はそれなりだ。

 ただ、命令を聞くくらいの分別や良識はある。

 それがあるから集団行動、組織だった動きが出来る。

 それだけで十分だった。

 組織だった動きすら難しいのがゴブリンなのだから。

 それが出来るようになるだけでも大きな進歩である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


_____________________

 ファンティアへのリンクはこちら↓


【よぎそーとのネグラ 】
https://fantia.jp/posts/2691457


 投げ銭・チップを弾んでくれるとありがたい。
登録が必要なので、手間だとは思うが。

これまでの活動へ。
これからの執筆のために。

お話も少しだけ置いてある。
手にとってもらえるとありがたい。


_____________________



+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ