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253回 質が量を上回ることはない

「出来ないことはしょうがない。

 出来る事をすすめていこう」

「分かってる」

 イビルエルフもそれは分かってる。

 それでも愚痴らずにはいられないのだ。

「幸い、こちらの体勢はととのっていってる。

 思ったよりも早くな」

 そうなってるだけでも御の字である。

 これでこちらの進捗が思わしくないとなれば、今後の展望は暗くなる一方だ。

「新兵の訓練も、陣地の構築も進んでる。

 空いてる村や町への入居もな。

 それらがまともに動き出すまで、そんなにかからないだろう」

「そうか」

「それに、あれが大きいな」

 言いながらイビルエルフは報告書の束を取り出す。

「即席の魔術兵だ。

 思ってた以上に上手くいきそうだ」



 魔術兵。

 文字通り魔術を使う兵士である。

 その存在は、戦闘の趨勢に大きな影響を与える。

 だが、魔術を使える者が少ない事もあり、その確保に両陣営共に苦しんでる。

 そのため、どうしても温存しがちで、なかなか戦場に出す事が出来ない。

 出せば出したで大きな損失を受けて、回復も難しい。

 特に高度で威力の高い魔術を使う者は。

 なのだが、ユキヒコはここで発想を変える。

「魔術で直接敵を倒さなくてもいい。

 それより、少しでも支援がもらえればありがたい」



 それは兵士として戦ってきたユキヒコの感想でもあった。

 魔術師の放つ魔術は確かに頼りになる。

 特に広範囲を巻き込む攻撃魔術は一気に敵を削っていく。

 放たれればその射線上にいる全てをまきこむ稲妻。

 何人もの敵を巻き込む炎の球。

 槍のようにつき上がって敵を串刺しにする土の槍。

 それらによって戦況が変わる事もあった。

 だが、何もそこまで威力のあるもので無くても良いのでは、と思う事もあった。



 それは覚醒階梯が上がって、自分でも不可思議な力が使えるようになってより強く思うようになった。

 たしかに一度に敵を一気に倒せるなら、それに越したことは無い。

 だが、それだけの威力が果たして必要なのか?

 確かに戦況を左右する程の威力を持つ魔術師は欲しい。

 そういった者がいれば、形勢逆転も狙えるのだ。

 だが、実際にそういった力が使えるようになって思う。

(そこまで強力なのが必要か?)



 単純に敵を倒すなら、そこまで大がかりな魔術は必要ない。

 一撃で敵を倒さなくても、敵を不利にするような効果を発生させればいい。

 例えば、顔の高さで火花を散らす。

 例えば、足下の土にでこぼこを発生させ、動きを鈍くする。

 例えば、それなりの強さの風を吹かせて、矢をそらす。

 例えば、顔に水をかけて一瞬だけ目潰しをする。

 例えば、かんしゃく玉の破裂音を鳴り響かせて、足音を消す。

 例えば、閃光を発生させて目くらましをかける。

 例えば、暗闇を発生させて、視界を奪う。

 子供だましのような手段である。

 だが、これだけで十分に効果は出る。

 やれば敵は一瞬だけ体勢を崩したり視界を奪われる。

 それだけで敵は動きを止める。

 それで十分だ。

 隙だらけになったその瞬間を狙って攻撃すればいい。

 ろくな抵抗も出来ずに相手は倒れる。

 最前線で戦ってきたユキヒコが求めていたのも、こういったものだった。

 敵を圧倒する火力よりも、継続的に得られる支援。

 それが欲しかった。



 精神介入や念動力を使えるようになってこういった事を痛感する。

 敵を倒すような強力な力を用いるのは難しい。

 消耗も大きい。

 だが、ちょっとした事ならそこまで大変でもない。

 目くらましをかける、少し足を引っ張る。

 その程度ならば問題なく行える。

 消耗などしない。

 そうしてから相手に斬りつければ簡単に倒せる。

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