247回 寄り道先、こちら側で最も信頼出来る者と
確保した数万に及ぶ聖女。
それだけの人数がいれば、対応できる人数もそれだけ増える。
なのでユキヒコは、自分たち以外の部隊にも聖女を解放していた。
おかげで休息を得た兵士達が次々に押し寄せる。
ひっきりなしに馬車が出入りする程に。
おかげでユキヒコは、当初の予定以上に兵士を確保しやすくなっていた。
そんな所におりたユキヒコは、そのまま目の前の建物に入っていく。
目的の人物がそこにいるからだ。
聖女をまとめておく形態の館がほとんどの中、そこは珍しく個室になっている。
細かく区切られた部屋が並ぶその建物の中を進みながら、ユキヒコはとある部屋の中に入る。
そこに目的の人物がいる。
「よう、励んでるな」
「ん?
ああ、来たのか」
振り返って返事をするのは、子作りに励むグゴガ・ルだ。
「こっちに来るとは聞いてなかったが」
「ついでだよ、呼び出しの帰りのな」
「ご苦労な事だ」
そう言ってグゴガ・ルは体を起こす。
「何かあったのか?」
「そういうわけじゃない。
けど、どうしてるのかなって思ってね」
「まずまずだな」
備え付けのベッドに腰をかけなおしたグゴガ・ルは、そう言って笑う。
「新人の訓練と選別。
それと、お前さんに勧められた子作り。
やる事はそんなに多くはないはずなんだが、妙に忙しい」
「無茶を押しつけちまったか?」
「いや、充実してる。
特にこっちはな」
ベッドの上の聖女を指す。
そんなグゴガ・ルにユキヒコもつられて笑う。
「ならいいや」
二人は盛大に笑った。
「まあ、立ち寄ったついでに、状況も教えてもらおうと思ってね」
聖女の館を一度あとにして二人は、近況の報告をしあっていく。
四方山話のつもりではじめたそれは、意外な事の発見につながっていく。
言ったはずの事が伝わってなかったり。
言ってもいない事が指示として実行されようとしてたり。
そんなすれ違いが色々発生してたいた。
離れた所にいる者同士、どうしても連絡間違いが発生してしまう。
「連絡はとりあってたけどな」
「まあ、直接顔を合わせて話し合った方が伝わる事もあるからな」
こればかりは笑えないので、対策が必要になる。
「けど、だいたいは上手くいってるんだな」
それが救いだった。
細かな違いがあるにせよ、やるべき事は進んでいて何よりだった。
後ろに下がったグゴガ・ルにも仕事はある。
子供を作るだけというわけではない。
拡大しなければならない軍の編成。
そのための新人教育。
それを担っていた。
そちらは色々と面倒もあるが、まずまず順調に進んでいた。
そしてもう一つ。
手に入れた新たな力にも馴れてもらわねばならなかった。




