245回 味方になってくれるありがたさと、味方であっても警戒する強さを秤にかける
(まいったな)
ユキヒコとの対談を終えたヨウセンは何度もため息を吐く。
(厄介な奴だ)
どうしてもそういう考えになる。
ユキヒコに嫌悪感を抱いてるからではない。
どちらかと言えば好感をもったくらいだ。
だが、それはそれとして、交渉相手としては面倒である。
気持ちが読まれるというのは、それだけで相当不利になる。
(この程度の要望で済んで良かったが)
求められた事。
それはヨウセンの想定内ではあった。
少しばかりの手間はかかるだろうが、そんな大きな無茶は言ってない。
基本的に現状の延長にあるものばかりである。
だが、それがいつまでも続くとは限らない。
より大きな要望を切り出すための布石。
その準備として、飲み込める程度の要求をしてきてるのかもしれない。
交渉手段の基本だ。
(もっとも……)
そう考えつつも、ヨウセンはそんな考えを振り払う。
確かに少しずつ要求を高くしていくという方法はある。
しかしユキヒコがとったのはそういうやり方ではない。
むしろ、その逆だ。
(殲滅か)
最初に切り出してきた事。
それがユキヒコの要望であり要求である。
それが目的であるので、協力しろと。
あまりにも要求が大きすぎて逆に認識出来なくなっていたが。
あらためて考えれば、おそろしく実現困難なものを求められているのだ。
しかもこの要望。
期限が示されてない。
いつまで、と限ったものではない。
いや、殲滅までとは言っているので、期限はそれになる。
だが、それがいつになるのか分からない。
あるようで無い期限だった。
事実上、永遠にという事になる。
また、その時まで協力を求めるというのも厄介だ。
それまでの間、人員も物資も求め続けるという事になる。
特にここまでというのを決めてないのだから。
欲しいときに寄越せと言ってるようなものだ。
一応、当座必要なものは求められた。
それらはもちろん用意する。
しかし、それは当座である。
それで終わりというわけではない。
それが第一回で、その後に第二回第三回と続く。
それを考えると頭が痛くなる。
(だが、やるしかないか)
ユキヒコの力は強力で強大だ。
いまだに信じ切れないでいるが、邪神官が言ってるのだ。
疑うわけにもいかない。
そして、その邪神官があげてきた報告書。
そこに書かれてる内容が真実ならば、ユキヒコの力は想像以上となる。
少なくとも勇者と聖女というイエル側の最高戦力を凌駕する。
それを敵に回すわけにはいかない。
多少の無茶は飲んででも。
(それでも、安いものだ)
ユキヒコの望みが口にしたようなものであり。
それをかなえる対価として、その力を自分達の為に使ってくれるなら。
多少の出費は惜しくもないだろう。
消費や浪費ではなく、投資になるのだから。
それも得がたい戦力になる。
勇者と聖女を退ける事が出来る存在。
それが自分たちの味方になる。
これほどありがたいものはない。
(それに)
侵攻の為に色々と頑張ってくれている。
ならば、援助を惜しむ事は無い。
無理なく出せるならばどんどん出そうとも思う。
(とりあえずは、私の権限のうちでだな)
与えられた権限で、ある程度の融通はきく。
その中で出せるものは全部出していくつもりだった。
それくらいユキヒコの提案は魅力的だった。




