241回 直接会うのも必要なので魔族の重鎮に会いにいく 4
戻ったユキヒコは邪神官と共に重鎮と呼ばれる者の所へと向かう。
それなりに大きな城の中を、それなりに歩いて。
それほど大きな用件ではないので、事務処理用の小部屋が対面の場となる。
あくまで事務的な用件なので、大げさな事をするわけではないからだ。
おかげで面倒な礼儀作法に悩む必要がない。
それだけでもユキヒコにはありがたかった。
向かった小部屋では、既に到着していた相手がユキヒコ達を迎える。
年の頃は40代といったところか。
職務を示す襟章をつけた男が、対談用の卓の前で座っている。
うっすらと青みがかかった肌が特徴的なその男は、
「ようこそ」
と言って立ち上がった。
特に威圧的という事もない。
笑顔でお迎えという程では無いが、拒絶などはしてないようだ。
それがありがたい。
ただ、その態度やのぞき見した心の動きより、ユキヒコは目の前の男の種族の方に興味が向いた。
(吸血族か)
話には聞いていたが、見るのは初めての種族。
血を吸うといわれている存在、吸血族。
それが目の前にいる。
吸血族。
血を吸うと言われるその種族は、魔族を構成する者達の一つである。
その名の通り、生物の血を吸う事で生きていると言われている。
そのために警戒される事の多い種族だった。
なのだが、その能力は人間族より高く、寿命も長い。
また、エルフ並の外見の美しさもあって、見た目に惹かれる者もまた多い。
薄く青白い肌が人によっては違和感を抱かせるが、それ以外の部分については概ね優れた素質を持っている。
一番の問題となる吸血も、実はそう頻繁に行う必要がない。
概ね一ヶ月から二ヶ月に一度。
それも生命に影響の無い程度の量で十分である。
その間は通常の食事で栄養補給はまかなえる。
なので好んで交友や交流を深める者もいる。
その吸血族が目の前に居る。
初めてみるのでどうしても興味を抱いてしまう。
そんなユキヒコを吸血族の男は促す。
「まずはかけたまえ。
立ち話もなんだからな」
そう言って笑みを浮かべる顔と態度には裏がありそうには思えない。
なのでその言葉にユキヒコは、
「失礼します」
と言って促されるままに席に座った。
邪神官も続く。
それを見て相手も腰をかける。
事務用というよりは小さな会議室といった雰囲気の部屋である。
そのため、机は大きく、椅子もそれなりの丁寧な作りのものだった。
応接間というほどの豪勢さはないが、機能的でいながらも長時間の対談を意識したものになっている。
そのため、椅子も長時間座っていてもあまり疲れないような作りになっている。
また、会議や対談とはいえ、そう気張ったものではないようだ。
室内に控えていた者がお茶を出していく。
これが本格的な会議などだったらこんなものは出ない。
ある程度くだけた場という雰囲気を感じた。




