238回 直接会うのも必要なので魔族の重鎮に会いにいく
「まあ、順調だな」
上がってくる報告を聞いて、ユキヒコは満足そうに頷く。
「あいつらは逃げて固まって、しばらく動けない。
その分だけ時間が稼げる」
それが最大の目的である。
予想外だったのは、ユキヒコ達の方面の戦果が他に影響した事だ。
まさかこの方面の敵の大半が後退するとは思わなかった。
「その分、敵も防衛体制をととのえたがな」
「なに、それくらいどうって事ない。
こっちの準備がととのえば、いくらでも突破出来る」
邪神官が気にしてる問題を、ユキヒコは軽く吹き飛ばす。
それだけの自信があった。
「ただな」
そんなユキヒコに邪神官が言いにくそうに切り出す。
「さすがに俺だけの権限で色々やるのは難しくなった」
「……何かあったのか?」
「上層部が理由を聞いてきた。
これだけ大きくやってる理由はなんだとな」
それでユキヒコは理解した。
「だから説明をしろと。
何を目的としてこれだけのものを使ってるのかと」
「そりゃそうだな」
疑問を抱くのも当たり前だと思った。
新領地の立ち上げにあたり、ユキヒコ達は様々なものを求めた。
新たな領地に入る人間や道具・物資。
これらが無ければ始まらない。
また、作業用の人員も求めていた。
最低限の防衛設備は作らねばならないからだ。
しかし、そうだとしてもあまりに異様な要望もある。
その際たるものが犯罪者とゴブリンだろう。
これらについては、どれだけ送り込んでも『もっともっと』と要求が続くのだ。
何を考えてるのか聞きたくなろうというものだ。
「犯罪者が減って助かってはいるらしいが」
「そいつは良かった」
「ゴブリンの方も、職にあぶれてる連中が志願してきてるそうだ」
「そっちも助かるな」
どっちもまだまだ人手不足だった。
犯罪者は送り込んでもほぼすぐに倒されてしまう。
ゴブリンも同じだ。
ろくに訓練もされてないのだから当然である。
どうしても新人が必要になる。
おかげで牢屋が少しずつ空くようになってるという。
囚人に出さねばならない食い扶持が減って助かってるようだ。
ゴブリンも同じで、無駄飯くらいが減ってありがたいという。
「ゴブリンもなかなか良いのが来ないしな」
求めてるのは能力がある者ではなく、規律のとれてる者である。
ゴブリンの中では希少価値である。
それを確保するのはなかなかに大変である。
おかげで、集まってきても実際に残る数は少ない。
延々と募集を続ける事になってしまっている。
理由は説明してるが、それでもこんな事が続けば不審に思うだろう。
一度直接説明する必要はある。
「それで、いつ頃顔を出せばいい?」
「特に期限はないが、できるだけ早いほうがいいな」
「分かった。
じゃあ、今すぐにでも行こう」
即断即決である。
「いいのか?」
「今のところはやる事もないしね」
直接ユキヒコがあれこれするような部分はない。
大半が現地の者達の手で動いている。
下手に口出しする方が、その動きを阻害しかねない。
「丁度良い時期って事なんだろうな」
何をするにしても都合の良い瞬間というのがある。
それは狙って作り出せるようなものではない。
本当に様々な要因が重なって生まれるものである。
たまたま他にする事がなかった。
たまたま必要な道具や準備がそろっていた。
たまたま当事者が全員顔を合わせる事が出来た。
そういった瞬間というのは、本当に偶然の産物として生まれる。
ユキヒコにとって今がそうなのだろう。
魔族の重鎮に会うには。
出発も早急に決まった。
ユキヒコが向かう旨を書面にして発し、それからすぐに移動を開始する。
目的地は後方に数十キロほど下がった場所。
この辺りの前線を司る司令所になる。
そこにある魔族/異種族連合の拠点に面談を求める者達が集っている。
ユキヒコと邪神官は、そこに向かう馬車に乗り込んだ。
いい人だなあ、勇者と聖女は
↑
間違って書き込んでしまってた
この前の話の後書きに書き込んでるだけのつもりだったのだが
だがまあ、こういうしくじりも含めてネット小説ということで
でも、本当に思うんだよ
いい人だなあ、勇者と聖女は
みんなもそう思わない?
(同意を求めてどうすんだと思うが)




