230回 片付いた者とやり残しがある者 3
(まあ、落とし前はきっちりつけないと)
誰も清算をしてくれない。
だからユキヒコ自身で決着をつけねばならなかった。
一緒に生きていくつもりだった相手。
それを勝手に奪い、何の決着もつけられないまま引き裂かれた。
(あいつはそれでいいんだろうけど)
自分が知らないところで何があったのかは分からない。
気持ちが変化するまでにどういった事があったのか。
しかし、それはユキヒコが関知する事では無い。
必要なのは、自分を置き去りにして勝手に全てを処理したこと。
何の関与もさせず、結果だけを押しつけてきた。
それが許せなかった。
それも許せなかった。
何よりも心変わりが許せなかった。
自分は思い続けていたのに。
どうしても振り切れなかったのに。
(女々しいかな)
そうも思う。
もうこうなってしまったのなら、それを受け入れるしかないのかもしれない。
だが、そんな物わかりの良さに身を浸すつもりにはなれなかった。
勝手にやられた、それに流されるのはごめんだった。
それがストーカーじみた偏執、執着であったとしてもだ。
執着がないよりはよっぽど良い。
執着とは愛情や気持ち、心があるから出てくるものだ。
それがないという事は、心がない、愛が無いという事でしかない。
言い換えればこだわりがない。
これはこれで恐ろしい事である。
こだわりがあるから、人は一つの事に集中もできる。
何かを丁寧に仕上げる、よりよい状態に昇華する。
それを為すのは、執着ともいえるこだわりだ。
どうすれば良くなるのか、何をすれば良いのかを延々と考え、求めねばならないのだから。
それがこだわりという執着だ。
これが無いなら、人間同士の関係すら続かない。
関係の深さや長さは、感情的な交流によるものになる。
執着やこだわりとまではいかないまでも、どうにかして続けようと思わねば付き合いは続かない。
また、関係をよりよいものにしていくためにも、大なり小なり改善はなされていく。
それもまたこだわりや執着あってのものだろう。
これがないなら、合わないと思った時点で関係を切断する事を選ぶ。
そこで終わりだ。
だが、執着があるからこそ、何らかの妥協や調整、新たな関係の構築を経て関係を続ける。
結果としてだが、それが付き合いの長さや親密さにもなっていくだろう。
それを一気に切断された。
踏み潰された。
勝手に壊された。
ユキヒコの事などこれっぽっちも顧みず。
だから許す事が出来なかった
許すつもりもなかった。
仮にユキヒコと聖女になった幼なじみであるユカ。
二人の関係が終わったとしよう。
ならば、ユキヒコが過去を顧みる必要性もなくなる。
ユキヒコをつなぎ止めていた要素がなくなってるのだから。
女神/魔女イエルの側には。
そこからどこで何をしようとユキヒコの勝手である。
(やっぱり潰さないとな)
世界を。
イエルを。
最低でも教会や国を。
何より勇者と聖女達を。
(やってやんないと)
感想メッセージありがとう
誤字脱字報告助かってます
7/25まで予約投稿済み
以上、業務連絡みたいな後書きでした




