224回 おそるべき魔族の動き、その実態
まず、策なんてものはない。
兵隊を送り込んだユキヒコ達は、何にも考えていなかった。
ただ、厄介払いが出来ればいい、それだけである。
その後は到着する犯罪者やゴブリンを、その都度その都度送り出しただけだ。
そこに作戦はなく、方針もない。
ただ、
「こっちに帰ってくんな。
向こう側なら好きなだけすすめ」
そういった事を伝えただけである。
戻ってこないよう、兵士を配置して。
そして犯罪者や追放されたできの悪いゴブリンも、好き勝手に動いていただけだ。
彼らにも策や知恵があったわけではない。
少人数で動いてるのは、最初に追放された者だけで固まってるからだ。
他に仲間はいないし、やむなくである。
逃げ出すのは、そういう指示があったからではなく、まともに戦う気概がないからだ。
犯罪者にしろゴブリンにしろ、自分より強い奴と戦おうという者はいない。
不利になったら逃げるのが基本だ。
だからこそ、悪さをしても捕まることなく生きてこれた。
種族的に弱いゴブリンは、逃げるのが基本的な生存戦略でもある。
下手に立ち向かえば、簡単に撃破されるだけなのだから。
そんな彼らにとって、大人数のいる陣地の建築現場など、絶対に近づいてはいけない場所だった。
いけば必ず殺される。
それが分かってるからそこから離れた場所を活動地域にしている。
もし戦略的に考えるなら、陣地が出来上がるまでに破壊しなければならないだろう。
それをしないのは、立ち向かうほどの人数がいないから。
何より、そんな所に行けば自分が死ぬかもしれないから。
そういう打算が働いてるだけである。
結果としてそれが、つかず離れずの距離を保って出現する、という事にもなってる、
陣地建築の警備にあたってる者達には気味の悪い動きだろう。
いつ襲ってくるか分からないのだから。
だが犯罪者やゴブリンに何らかの意図があったわけではない。
そういう所に出てきてしまったのは、そこに何があるか知らずにやってきただけだからだ。
地理になれてないからいきなりぶち当たってしまっただけである。
そんな犯罪者やできの悪いゴブリンも、まれに合流する事がある。
今の人数ではたいした事が出来ないと考えた場合だ。
そういう時には、合流してより大規模な部隊になる事もある。
こういう事は、一度か二度敵と遭遇して逃げ切った者達がやる事が多い。




