222回 不可解な、しかしおそるべき魔族の動き 2
小規模な部隊しかいない。
そのため、ある程度以上の数を集めてぶつければ、まず勝てる。
撃破するのはたやすい。
しかし、先ほども述べた通り、数が多い。
簡単に撃破しても、敵はまだまだ残ってる事になる。
それらを倒す為には、こちらも可能な限り多くの部隊を分散させねばならない。
単純に人数が必要になる。
この人数確保が難題だった。
敵は確かに小規模で、戦闘能力も高くは無い。
しかし、対処できる人数の方が限界に来てしまう。
どれだけ繰り出しても、敵の全てを倒す事は出来ない。
「おまけに、敵はよく逃げるのです」
「逃げる?」
「はい。
戦っても少し劣勢になるとすぐに逃げます」
「それは良いことなのでは?」
「逃げて戻ってこなければ。
しかし、連中は生き延びたら再びやってくるのです」
それが部隊移動の障害になっていた。
「逃げても戻ってくるなら、その場から移動する事が出来ません。
場所を確保するために兵力を釘付けにしなくてはなりません」
「なるほど……」
言いたいことはそれで分かった。
つまり、敵を殲滅しきれないから、防衛の為に余計に兵士を配置する必要があるのだ。
「そのため、見つけ次第可能な限り倒すようにはしてるのですが」
「そうもいかないのか?」
「はい。
これが、戦ってもそれほどではないようなのですが、逃げ足だけは一品だとかで」
どうしても敵を全滅しきれない。
そのせいで、再度の襲撃を警戒しなくてはならなくなる。
「そして、たまにですが、一定以上の規模で襲ってくる事もあるので」
だいたい、今はイエル側の陣営も小規模部隊をあちこちに配置してる状態だ。
そんな所に、まとまった数の敵が襲いかかったら大変な事になる。
今度はイエル側が数の暴力で負ける。
「そうした形で損害が出ています」
全滅を免れた兵士の証言でこういった事が明らかになった。




