221回 不可解な、しかしおそるべき魔族の動き
「しかし、なぜ攻撃を仕掛けてこない?」
その事が不思議であった。
完成した後ならともかく、その途中であれば、攻撃して設備を破壊するものだ。
でないと、今後の作戦活動に支障が出る。
たとえ粗末なものであっても、防備が有るのと無いのとでは大きな違いになる。
それをしてこないのが不思議だった。
「その事なのですが」
疑問に思うヒサカゲと他の首脳。
そんな彼らに警備担当は、現場から上がってきた報告などを伝えていく。
「どうも敵の動きがおかしいのです」
「ほう」
「なんといいますか……バラバラで統制がとれてないというか。
どうにも行き当たりばったり過ぎるというか」
警備担当は少しばかり言いよどんだ。
上がってきた報告の内容が常とは違う。
そのため、どう説明したら良いのか少しばかり悩んでしまっていた。
「どう言えば良いのか、私も悩むのですが……。
どうにも敵の動きが妙なものでして」
「例えば?」
「そうですな……。
例えば、小部隊による移動」
警備担当は、まず気がついたところから説明を始めた。
「不思議な事に敵は、あまり大きな部隊では動いてません。
だいたいが数人ていど。
大きくても十人か二十人といったところです」
軍隊でいえば、分隊か小隊くらいの人数である。
「それくらいで動くのは普通ではないのか?」
「まあ、偵察や伝令ならば。
しかし、移動や戦闘においては集合するのが普通です。
でなければ、不意の遭遇戦に対応出来ませんから」
特に大規模な戦闘に向かう場合、固まって移動する。
そうでなければ、攻略対象を撃破出来ないからだ。
「今回やってきた敵にそういった動きが見られません」
それは、小規模の部隊であちこち好き勝手に動き回ってるという事だった。
「そのため、大規模な戦闘にはなりません。
いずれも小規模な戦いがあちこちで起こってます」
それが問題というわけではなかった。
小規模な部隊ばかりなので、大部隊を動かす必要がない。
こちらも小部隊をあてていく事で対処が出来る。
「なのですが……」
問題なのはそこからだった。




