218回 敵は対応する、たとえ残酷非道な手段であっても 4
現在、ゴブリンなどがはびこってる地域では、まともな経済活動が行われていない。
経済というよりは、社会がまともに機能してない。
村や町が襲われ、食料から物品まで様々なものが奪われてるからだ。
そんなところでまともに人が生活出来るわけがない。
そういった地域の者達を用いるなら、それほど社会に影響は与えない。
もう既に混乱しているのだから。
生産活動が既に停滞しているのだから。
それが停止したところで、結果はさほど変わらない。
そんな所まで前線近くの地域は停滞してるのが問題ではあるが。
そこから人を引き抜き、防備を設置させる労働力にする。
これならば他の地域にさほど影響は与えない。
「手当も、寝床と食事を与えておけばいいだろう。
特に村や町から逃げてきた者達ならばな」
住むところすら失った者達ならば、それだけでもありがたいものだろう。
「とにかく急いでくれ。
逃げてきた者達だけではない。
まだ村や町にとどまってる者達も集めるのだ」
「そこまでやるのですか?」
「やらねばならなん」
断固としてヒサカゲは言う。
「それだけ集めても人手が足りるか分からん。
とにかく急がねばならんのだ。
今は少しでも多くの労働者を得なければならん」
非常事態故に、非情の選択も必要になる。
なにより、
「手遅れになって、あの避難民のような者達を増やすわけにはいかん」
そういった危惧もあった。
壊滅した県から流れてきた者達。
そのほとんどは片目片耳片腕片足を潰されていた。
労働力として使う事が出来ないほどに。
治療しようにも、そこまでやられてしまっては通常の治療魔術程度ではどうにもならない。
女神の奇跡に頼るしかないが、それを用いても、数多くの難民を救う事は出来ない。
かといって一部だけでも救おうにも、そんな事をしたらあぶれた者達が不平不満を持つ。
現時点では打つ手なしの状況だ。
「そうなる前に、少しでもまともに働ける者を徴集しろ」
強引な手段を使ってでも。
そこまでするのには、それなりの事情があった。
「分かりました」
重臣も承諾する。
ヒサカゲの意を汲み取って。




