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21回 思い出────他に選べる道が険しくとも、それしかないならば

 そんなユキヒコの義勇兵としての仕事は、雑用から始まる。

 実力のない新人の作業としては当然だろう。

 荷物運びに掃除など、様々な事をやらされていった。

 それをユキヒコは黙々とこなしていった。



(まずは仕事をおぼえないと)

 そう思ってとにかく仕事をやっていった。

 体よく使われてるのは分かってる。

 だが。仕事が分かってないうちは仕方が無い。

 文句はあるが、口にする事無く働いた。

 そうしながら、義勇兵とはどういうものかを見聞きしながら調べていった。



 義勇兵全般に言えるが、主な仕事は軍隊の雑用係である。

 そこは事前に聞いていた話とさほど違いは無い。

 輸送用の荷物を積み込んだり、その護衛に駆り出されたり。

 あるいは基地における簡単な見張りや見回り。

 場合によっては、基地の清掃などを含む内部業務。

 読み書きが出来るなら、書類作業をさせられる事もある。

 こういったものがほとんどだった。



 一応は軍隊の一部なので、戦闘任務もある。

 しかしそういった任務はほとんどやってこない。

 どうなってるのかというと、それらはほとどが志願による者だという。

 それもそうだろうと思った。

 たかだか二週間の訓練しかしてないのだ。

 そんな人間を戦場に送り込んも、成果が出るわけがない。

 死体を無駄に増やすだけだ。



 それでも、望むならば最前線に赴ける。

 そこで戦闘任務に従事する事も可能ではあった。

 義勇兵でそれを望む者はそうはいなかったが。

 無理して戦場に出向こうなんて者はいない。

 皆、命が惜しいのだ。

 せっかく危険の少ない義勇兵をやってるのだし。

 無理して戦場に出るような殊勝な者はそう多くは無い。



 その分稼ぎも出世の可能性も低い。

 生きていく分には問題ないが、生きていくだけである。

 狭い宿舎、まずい飯、官給品の衣服。

 それらが基本的に無料で手にはいる。

 それと、雀の涙の賃金。

 それで満足するのが大半の義勇兵だった。



 ただそれでもユキヒコにはありがたいものがあった。

 寝床と食い物にありつけるのだ。

 文句があるわけがない。

 ほぼ身一つで村を出てきたのだから、それが得られるだけでもありがたかった。



 何より嬉しかったのは、技術の講習がおこなわれていること。

 義勇兵でもやる気のある者はいる。

 そういった者達の為に定期的に講習が開かれていた。

 自発的な訓練過程と言ってよいかもしれない。

 そういったものがあるとは思わなかったので、これは意外だった。



 冷静に考えれば、それもそうだろうとは思った。

 ただの雑用係で終わらせるのももったいない。

 やる気のある者にはそれなりの可能性を与えている。

 そうして使える駒が増えれば、軍としても大助かりだ。

 


 それに応える気概を持った義勇兵はほとんど無いけども。

 しかし、正規軍から落ちたが、出世を狙う者などはこういった所で研鑽を積む。

 あるいは、救国やイエル崇拝の念から志を立てるものなどが。

 そのどちらもでもないが、ユキヒコもこうした講習や訓練には可能な限り参加した。



 参加してみて分かったが、やる気のある者は意外と多かった。

 適当に日々を過ごす義勇兵を見ていたユキヒコはそれに驚いた。

 聞けば、多少なりとも待遇を良くする為だとか。

 あるいは、少しでも生き延びられるようにと考えての事だという。



 たしかに講習に参加し、技術や知識の取得を認められれば待遇も良くなる。

 軍としては使える人材を優遇するのも当然だろう。

 それに、義勇兵とていつ駆り出されるか分からない。

 そういった時に備えておくというのも真っ当な理由だ。

 いくら雑用や後方での仕事が多いとはいえ、義勇兵も一般よりは危険に接する事が多い。

 それらの対処しようというのも妥当なところだ。



 出世を狙うにしても、何かしら出来るようになっておいた方が有利である。

 最低限の事が出来ない者を優先するような事はまずありえない。

 そもそも、そんな人間が生き残れる可能性は低い。

 待遇、つまりは普段の生活もそうだが、出世という面でも出来る人間が優先される。



 そもそも義勇兵でも出世しようとしたら、危険な任務に従事せねばならない。

 もしくは、何かしらの功績をあげねばならない。

 その為にも、ある程度の能力や技術が必要になる。

 成功はそういったものがあるかどうかで格段に変わってくるだろう。



 そんな中でユキヒコも必死に講習や訓練に取り組んだ。

 その全てに合格できたわけでは無いが、身につける事が出来たものも多い。

 おかげで、それなりの兵士としてやっていけるようになっていった。

 ただの農民として生まれて育ってきたユキヒコからすれば、快挙としか言い様がない。



 おかげで、待遇は少しずつ良くなった。

 宿舎はもう少し快適な所に移動した。

 出される食事も多少はおいしくなった。

 支給される衣服も増えた。

 払われる給料も上がった。



 何より、熱心に講習に通ってくるのだから顔と名前もおぼえられる。

 そういった所から、なんらかの推挙を受ける事もある。

 危険ではあるが、望むならば出世の糸口になるような任務などが。

 それらにユキヒコは喜んで応じていった。


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