204回 新たに領地として与えられたが、維持と管理を押しつけられただけではないだろうか 3
「敵地に放り込む」
答えは単純だ。
「こっち側にこなければ何をしてもいいと言ってな。
どうせ攻め込む場所だ。
どれだけ荒れても問題はない。
むしろ、その方が好都合だ」
「なるほど」
邪神官も安心する。
指揮下に入れるというわけではないからだ。
名目上の指揮官は邪神官になるだろうが。
しかし、その実態は敵地への追放のようなものだ。
「むしろ、こっちで犯罪者を引き取る事にした方がいいかもな」
「兵隊を安定して手に入れるためか?」
「そういうこと」
どうしたって罪を犯す者は一定数発生する。
それも継続的に。
ならば、そういった犯罪者を定期的に移送してもらった方が手間が省ける。
「それに、兵隊にしなくていい。
釈放条件に、敵地に向かう事を入れておけば」
「なるほどな」
ユキヒコ達は何も失わない。
社会も厄介者を放り出せる。
そして敵には損害を発生させる可能性が出てくる。
「思い通りに動かす事は出来ないけど、まあ、そのうち何かやらかしてくれるだろうよ」
何せ、今までやらかしてた連中である。
今後おとなしくなる理由はない。
それに、何ももたずに放り出されるのだ。
手近にあるものを奪うしかなくなるだろう。
「せいぜい頑張ってもらおう」
「そうだな」
まずは一つ、兵力の問題は少しだけ片付いた。
「それと、ゴブリンだ」
これも欠かせない。
「そっちの国にも大量にいるんだろ」
「ああ。
続々と生まれているよ」
繁殖力旺盛な種族である。
個体の弱さ故に死亡率も高いが、一旦環境がととのえば爆発的に増殖する。
そのため、ゴブリンは常に人口問題をもたらす存在ではあった。
「そいつらに働き口を提供してやろう」
最も数が多いゴブリンは、そのために常に働き口を求めている。
能力の低さゆえに単純労働しか出来ないが。
それでも食い扶持を求めている。
そのため、募集をかければ比較的簡単に集める事が出来る。
需要と供給である。
それが危険な兵士であっても、ゴブリンからすれば垂涎の的だ。
「集める時に教えてやれ。
成果は切り取り次第、自分次第。
好きなだけ自分のものにしていいって」
「敵地でか?」
「もちろん」
当然である。
ユキヒコ達で何かを用意してやる必要は無い。
「補給もしなくていい」
完全に現地調達、つまりは略奪前提での話である。
「とにかく敵を引っかき回せればいい。
こっちに向かってくる余裕がなくなるくらいにな」
勝つ必要は無い。
制圧する必要もない。
ただひたすら攻め込み、敵地を混乱させる。
それが目的だった。




