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199回 県都攻略、その後の戦略

 勇者タダトキと聖女シグレ。

 二人の死は周囲の者達に明確な絶望感を与えた。

 もしかしたらここからの逆転があるのでは?

 そんな幻想としか言えない希望。

 それが完全に打ち砕かれた。



 同時にそこから諦観が生まれていく。

 いや、もうそれは心の中のどこかにあった。

 もう駄目だろう、おしまいだろう。

 そんな気持ちはとっくに芽生えていた。

 だが、ありえない希望、起こるかもしれない奇跡。

 それがまだ諦観を押さえ込んでいた。

 今、それはもう無い

 あるのは、絶望すら通り越した諦めの境地だった。



 そんな連中が次々に処刑されていく。

 支配層の貴族。

 それらに働きかける力を持つ有力者。

 都市の主要人物達が処分されていく。

 彼らはこれまでのように半死半生の状態で生かされる事は無い。

 あまりにも権力や権威、能力があるので放置するのが危険だからだ。

 たとえ五体満足でなくても、その才覚で社会に影響力を持つ。

 そんな者達を逃すわけにはいかなかった。

 だからこそ、子供すらも処分した。

 そこから大人や老人にも及ぶ。



 今回は若い女も例外にはならなかった。

 彼女らには聖女としての仕事をあてがう事も考えられた。

 需要に対して供給が圧倒的に足りてないので、少しでも多い方が良いという事情がある。

 しかし、そうするにしても危険が伴う。

 平民庶民と違い、それなりの教養を備えてる者達だった。

 彼女らを中心に反乱が起きる可能性もある。

 このあたり、田舎の貴族とは比べものにならないほどの危険があった。

 もったいないという意見もあったが、こればかりはやむを得ない。

 仕方なく神々の供物になってもらった。



 それ以外については今まで通りとなる。

 教会関係者は例外なく生け贄にされる。

 女神・魔女イエルとつながりのある者達など、生かしておくだけで危険だった。

 これも残らず殲滅されていく。



 そして、男は手足をそれぞれ片方を破壊し、目と耳も片方を潰した。

 労働力としては使い物にならない状態で放逐。

 他の村や町、都市に向かって食い扶持を減らすよう努力してもらう事になる。

 そのための下準備である手足と目耳を潰す作業だが。

 これは今回は比較的楽に進んでいく。

 ユキヒコの洗脳が広範囲にわたって施されてるからだ。

 そのため人々は合図一つで互いに相手の体を潰していく。

 向かい合った者達が相手の体を破壊する。

 これで半数が潰れる。

 残った半数が更に相手を潰していく。

 そこでも残った半数が更に作業を続行する。

 こうやって残りわずかになるまで潰し合っていった。

 それでも残る者達は魔族が処理をしていく。

 そこだけが手間のかかる部分になった。



 女も同じだ。

 洗脳状態にして自ら動くように仕向けていく。

 それらを後方に移動させ、聖女としての仕事に従事させるため。

 誰も抵抗する事無く県都を出て目的地へと向かっていく。

 もちろん、ずっと歩き続けさせるわけにはいかない。

 無駄な疲労は避けねばならない。

 なので、かき集めた馬車を使って往復輸送を繰り返す。

 こればかりはどうしても手間がかかってしまう。



 また、収容施設の聖女の館。

 これの増設もせねばならない。

 何万人という人口を抱えていた県都である。

 女の数も馬鹿にならない。

 それらを入れておく場所を用意するのも大変な労力だった。

 これには魔族の軍勢総動員でとりかかる事になった。



 ただ、聖女の館の建設については、誰も文句を言わずに働いた。

 現金なものである。



 そうして県都の住人の処分が粗方終わったあと。

 ユキヒコは次なる手を打っていく。

 といっても大げさなものではない。

 軍勢全体の動きは邪神官が取り仕切っている。

 その采配に問題はなく、ユキヒコが口出しするような事はない。

 ユキヒコがかねてより求めていた通りに動いてるというのもある。

 そこにケチをつける理由が全くなかった。

 働きかけてるのは、もう少し身近な事である。



「なあ、グゴガ・ル」

「なんだ?」

「そろそろ、子供を作ってみないか?」

 信頼するゴブリンにユキヒコはそう提案した。

「問題がないなら、もうそういう頃合いだと思うんだけど」

「うーん、どうかな」

 沈思黙考するようにグゴガ・ルが目を閉じる。

「仕事もあるしな。

 そんな時間があるかも分からん」

「それなら大丈夫。

 他の者に変わってもらうから。

 それに、しばらくは戦場に出る事もないだろうしね」

「そうなのか?」

「たぶん。

 そういう風に働きかけてはいるから」

 事実である。

 とりあえず県都を陥落させた。

 ここで軍勢は一旦止まる事になる。

 補給が追いつかないし、ここから先に進むにはより多くの兵力が必要になる。

 それがととのうまでは動くに動けない。

 少なくとも前進は難しい。

「その間に子供を作ってみないか」

「うーん」

「俺は、お前さんの血筋を残してもらいたいと思ってる。

 あんたみたいな奴はなかなかいないからな」

「そう言ってもらえるのはありがたいな」

「だから、ちょっとがんばってもらえないか?

 適当な女は見繕っておくから」

「まあ、そこまで言うなら」

 グゴガ・ルとて断る理由はない。

 出来る事なら子供もほしいとは思っていた。

 それに、たまってる欲求の発散もしたかった。

 なのだが、今までの状況でそれがなかなか出来なかった。

 やるべき事は多く、責任は重い。

 それらをこなさないままにお楽しみふけるのはためらわれた。

 今もそれは変わらない。

 だが、前進が出来ないというこの時期であっても、それほど暇というわけではない。

 前に進まないだけで、それまでの準備はしなくてはならない。

 止まってるように見えて、その実、内部ではかなりの騒々しさを生んでいた。

 だが、

「そういう事なら」

 せっかくの機会である。

 断るのももったいなかった。



「だが、神官殿に承諾をもらわないと」

「それなら問題ない」

「ほう?」

「俺からの要望の中に入れておいた。

 部隊ごとの休息としてな。

 もう承諾はおりてる」

「なんとまあ、手際がいいな」

「まあね」

 あきれるやら関心するやらのグゴガ・ル。

 だが、こういう事が出来るからユキヒコは凄いのだとあらためて思う。

「それじゃあ、遠慮無く骨を休めてくるよ」

「がんばってくれ」

 休息にいくのに頑張れもないとは思う。

 しかし、これからする事を考えれば、頑張るしかないだろう。

 それが分かるから二人は、

「……くくくくくく」

「……ふははははは」

 笑いがこみあげてきた。

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