198回 かつての結果の始末 2
勇者タダトキと聖女シグレの子供。
その二人の処刑が終わった。
だが、まだ断罪は続く。
片付けねばならない問題はまだまだ残ってる。
その一つ。
勇者と聖女が処刑台にあげられていく。
ズタボロになるまで打ちのめされて彼らは、まともに動くことが出来ないほど消耗していた。
かろうじて生きてる程度に回復はされている。
だが、それだけだった。
そんな彼らの姿をみて、周囲にいるイエル側の人間は絶望の悲鳴をあげていく。
イエルの剣。
人類の希望。
魔族に打ち込まれる正義の鉄槌。
その象徴たる、勇者と聖女。
それらが打ちのめされた姿で処刑台にあげられたのだ。
打ちひしがれるのも無理はない。
とはいえ、勇者と聖女が潰える事も全くないわけではない。
どうしても力が及ばず倒れる者もいる。
そのため、勇者と聖女が完全無欠でないのは誰もが知っている。
しかし、それが自分たちの身近で、自分たちの関係のあるところで起こるとは思ってない。
遠いどこかで、そういう事もあるのだろうという程度にしか考えてない。
だからこうして己の目の前でそれを見せられて動揺する。
もしかしたら、万が一にも、と考える危機感がない。
それが彼らを最悪の状況に突き落としたのかもしれない。
そして勇者と聖女達は邪神官の前に引きずり出されていく。
どうなるかはもう誰もが分かっている。
彼らも今までの者達と同じように死ぬのだろうと誰もが予想していた。
実際その通りである。
魔族からすれば、こいつらを生かしておく理由がない。
魔女イエルの眷属である。
生かしておいたらいつ復活するか分からない。
さっさと始末するにこした事はない。
「大罪人よ」
邪神官はタダトキ達に宣言する。
「貴様らのおかした罪は重い。
数多くの、数え切れないほどの同胞を虐殺した。
その罪、ほんのわずかであっても償ってもらう」
魔族からすれば当然の話である。
侵略者であるイエルの尖兵としてどれほどの同胞を殺してきたのか。
その罪を少しでも晴らしてもらわねばならない。
償いが必要だった。
「神々よ」
儀式が始まる。
「この者達の魂を捧げる。
願わくば、この大罪人達の罪が、神々に捧げられる事で、わずかなりとも浄化されるように」
その言葉と同時に、聖女達から霊魂が吸収されていく。
「ひい……!」
「いやあ……!」
「やだ、やだ!」
セリナとアカリ、そしてもう一人の聖女が干からびていく。
その霊魂は魔族の神々に吸収され、一片も残さず消えていく。
それらは神々へと届き、彼らの力に還元されていった。
それを見ていたタダトキとシグレはもう何も言えなくなっていた。
絶望と恐怖。
それはあるはずだった。
だが、それも避けられないと思えば、妙に落ち着いていく。
開き直ってるのだろう。
怖さよりも諦めの方が大きかった。
(もう駄目か)
(無理ね)
そんな気持ちになっていく。
「さて、どうする」
処刑台の上で打ちひしがれてるタダトキとシグレ。
それを見てユキヒコが尋ねる。
隣に立つソウスケはそれには答えず、無言で進んでいく。
処刑台に進むその背中を見て、ユキヒコは軽く息を吐く。
「……余計なお世話だったかな?」
あえて彼に確認をした事を。
なにか言いたいことがあるなら、最後の瞬間に対面はさせられると伝えておいたが。
良くも悪くも最後の瞬間である。
思い残すとがないように、と伝えてはいた。
ただ、ソウスケがどうするかは彼自身の問題である。
無理強いは出来ない。
幸い……なのかどうかは分からない。
だが、ソウスケは処刑台に向かった。
(逃がすような事をしなければ、何をやってもいいけど)
それだけがユキヒコの懸念だった。
そうでなければ何をしてもたいていの事は目をつぶるつもりだった。
処刑台の上にのぼったソウスケは、タダトキとシグレの前に出る。
フードをかぶってるので、周囲のは誰なのかは分からない。
だが、近づいていった事でタダトキとシグレにはその顔が見えた。
「…………?」
「…………!」
無言ではあったが、二人ともそれぞれの反応を見せた。
タダトキは何がなんだか分からないという顔をお。
シグレは無言で息をのむ。
その違いがソウスケという存在への両者の認識の違いである。
タダトキからすれば見知らぬ他人である。
だが、シグレからすればかつて一緒だった夫。
知らぬ存ぜぬというわけにはいかなかった。
「久しぶり」
ソウスケが声をかける。
「元気にやってるよな」
元気だったのか、とは聞かない。
元気なのはいやでも分かる。
それだけの有名人なのだから。
「浮気、不倫。
楽しかったか?」
そうとしか言いようがなかった。
ソウスケからすれば、そういう事なのだから。
そして、その言葉でタダトキも目の前にいるのが誰なのか理解した。
「あなたが…………」
何か言おうとした瞬間にタダトキの横っ面がたたかれた。
ソウスケが持つ杖によって。
「うるせえよ、横取り間男が」
「…………」
それ以上の言葉はなかった。
ソウスケからすれば嫁を奪った極悪人である。
そして、タダトキからすれば、相手は大事な者を奪われた被害者である。
そして自分が加害者である事に変わりはない。
「ガキまでこさえて、さぞ仲良くやってたんだろうな」
冷淡に告げられる言葉。
しかしそこにはまごうことなき怒りが込められている。
「楽しかったんだろ、今まで」
侮蔑の念がさらに重なっていく。
二人を見るソウスケの目には、憎しみと汚物を見る嫌悪感が宿っていた。
「違う……」
「違うの!」
タダトキとシグレ、同時に声が上がる。
「申し訳ないと思っていた……」
「仕方なかったの」
それは確かにそうだろう。
タダトキからすれば、既に結婚してる者とつがわされたのだ。
罪悪感がないわけではない。
また、シグレにしても無理矢理聖女にさせられたのだ。
仕方がないというのは嘘ではない。
だが。
「それがどうした」
ソウスケには関係がない事である。
「悪いと思ってるからなんだ?
仕方がないからどうした?」
それが結果を覆すわけではない。
起こった事実は取り消す事が出来ず、この世にしっかりと刻まれていく。
その償いを、報いをどのようにしてくれるのか。
それだけが問題だ。
詫びの言葉で罪科がなくなるわけではない。
「くたばれよ、屑ども」
それがソウスケの心情である。
償いがほしいのは確かだ。
「おまえら二人……二匹がいると思うだけで吐き気がする」
二人ではなく二匹。
その数え方が二人の存在へのソウスケの評価である。
「…………」
「…………」
タダトキとシグレには言い返す言葉がなかった。
ここで言い訳をしないだけの分別があるだけ良心的なのかもしれない。
だが、それならそれで、ソウスケから妻を引き剥がすという外道な行いを掣肘するべきであろう。
それがなかった時点で、ソウスケからすれば二人は邪悪の権化と言うしかない。
「あのガキども……」
先ほど潰えたタダトキとシグレの子供。
「本当なら、俺とお前との間に出来てたんだろうな」
それはそれで大変だっただろう。
愚痴や文句が出ていただろう。
だが、それでもそれが羨ましいと思う。
夫婦生活を続けていたらどうなっただろう?
子供がいたらどうなってただろう?
そんな疑問への答え。
本来ならとっくに得ているはずだったものだったものの数々。
家庭も子供も、全てを。
しかし、もうそれを手にする事はない。
少なくとも、目の前にいる女との間には。
仮にやり直したとしてもだ。
家庭も子供も得ることは出来るかもしれない。
だが、これまでの時間が戻ってくる事は決してない。
人生、やり直せばいい。
そんな言葉もある。
だが、これほどの欺瞞はない。
失われた、過ぎ去った時が戻る事はない。
戻らないならやり直す事は出来ない。
出来ない事を、さも出来るように語る。
欺瞞でなくてなんであろう?
少なくとも、ソウスケの時間は戻ってこない。
その時間を補填する方法があるのか?
あったとして、何をもってソウスケの失われた何かを補うのか?
明確な答えはないだろう。
だが、失った何かの代わりに何を求めるのか。
それを決めるのはソウスケである。
「くたばれ」
それ以外の言葉がない。
何がほしいのかはソウスケ自身にもはっきりとは分からない。
だが、目の前にいる二匹。
こいつらにこれ以上存在していてほしくはなかった。
たとえそれが、イエルという屑の差し金によるものだったとしても。
それが二匹の意思や気持ちではなかったとしても。
「消えてくれよ、永遠に」
ソウスケが何か大切なものを失った事に変わりはないのだ。
その償いを求めたとしても責められるいわれはないだろう。
「破滅しろ」
魂ごと。
それが可能であると既に聞いている。
その方法も。
だから求める。
「────やってくれ」
邪神官に。
「こいつらを潰してくれ。
あんたらの神々に頼んでくれ」
頷いた邪神官は、ソウスケの願いをかなえていく。
事情は彼も聞いている。
酷いことをする、と彼も思った。
そして、目の前の哀れな犠牲者を少しでも救いたいと。
出来る事がどれだけあるか分からないが、可能なことはしてやりたいと。
だから願い通りに実行していく。
エナジードレイン────奪魂の儀式を。
霊魂が吸われていく。
体から剥離していく。
そのなんともいえない感触に、タダトキとシグレは怖気をおぼえた。
それはよくある、見えない何かへの恐怖ではない。
得体の知れない、正体不明の存在に抱く恐れではない。
己の存在が確かに消えていく。
何かが失われていく。
それはもう恐怖と言うのも憚られるような何かだった。
「うわあああああああああああああああああああああ!」
「いやあああああああああああああああああああああ!」
悲鳴と絶叫が響き渡る。
今までの犠牲者と同じように。
勇者と聖女といえども、自分が消えていく恐怖に勝つ事は出来なかった。
「いやだ、いやだ!」
「助けてええええええええええ!」
許しを、助けを求めて乞う声が響く。
周囲に響き渡るそれは、見つめていた聴衆達に二つの感情をおぼえさせる。
魔族には歓喜。
自分たちを虐げていた絶対の存在が潰えていく楽しさ。
イエルの信徒には絶望。
絶対的な強さをほこる存在が、身も世もなくわめく見苦しさ。
それがこの悲惨な状況を覆す手段がない事を示す。
「助けて、助けて、助けて!」
シグレがソウスケにすがる。
まともに動けない体で、今も霊魂を奪われてる中で。
力がどんどんなくなり、意識もはっきりしなくなる。
それでも叫ぶ。
「助けて、お願い!」
何度も何度も。
「愛してるの!」
意味があって言ってるのかどうか。
「お願い、あなたの事、わたし、わたし…………!」
見おろすソウスケはそんな女を淡々と見つめる。
命乞い。
実に見苦しい。
そう思った。
だが、その必死さはなんとなく分かる。
シグレが連れていかれた日から、ずっと自分もそうだったからだ。
必死だった。
報われないと思った。
漏れ聞くシグレの話が次々に絶望をもたらした。
その幸せそうな日々を聞いて、己との落差を感じさせた。
その女が、
「お願い、お願い……」
懇願している。
最後にすがる相手として、夫であるタダトキではなく。
捨てていったソウスケを選んでいる。
滑稽だった。
そして、腹がたった。
泣いてわめけば少しは気分が晴れるのかと思った。
多少は楽しい思いが出来るのかと思った。
だが、そんな事はなかった。
ただただ見苦しかった。
腹が立っていった。
この期に及んで命乞い。
その態度が気にくわなかった。
覚悟がない。
言うならばこれだろう。
最後まで何かを貫く事がない。
末期におよんで醜態をさらす。
それが気にくわなかった。
なんで最後まで聖女であろうとしない。
それが出来ないなら、なぜ聖女を続けた?
望んでそうなったのではないのかもしれない(それはソウスケには分からない)。
だが、聖女としてやってきたのだから、それを貫くべきだと思った。
戦場に出るのだから、もしかしたら死ぬかもしれない。
その可能性はあるのだから。
そうなった時の覚悟もなくやっていたのか?
そんな疑問が浮かぶ。
何よりも。
「助けて」
涙を流しながら叫ぶ。
「愛してるから」
気持ちを口にしてくる。
それが最高に、
「うっとうしい」
腹が立った。
「よく言えるな、本当に」
泣いてるゴミに向かってソウスケは吐き捨てた。
「よく言ったもんだよ」
思い浮かべるのはとある言葉。
そんなもんかなあ、と思っていた。
今、そうなんだなあ、と確信している。
その言葉が、目の前の屑と重なっていた。
「嘘と涙は女の武器」
その言葉の意味をかみしめる。
涙を流して懇願して。
愛してると口にして。
それがその二つと重なった。
「愛してるねえ。
よく言えたな、この嘘つき」
信用ならない言葉だった。
おそらくは嘘なのだろう。
だから信じない。
「だいたい、泣いてどうすんだ?
何の意味がある?」
涙だって何の解決策にもならない。
そこに何の意味も価値もない。
現状を覆す要素は皆無だ。
だがしかし。
これらが武器になるという。
武器とは、現状を有利にするもの。
問題を破壊するもの。
そういうものだろう。
だとすれば、嘘と涙は何を意味するのか?
「そんなもん、持ち出した時点で、テメエは敵なんだろ」
何よりもこれが大事であろう。
武器を使う相手は誰か?
何のために武器を使うのか?
「そこまでして俺の敵になるのかよ」
その意思表示でしかない。
そして。
武器とは敵を倒すもの。
敵を殺すものである。
「……そんなに俺が憎いか」
少なくとも武器をふるうほどに敵視してるのは確かだろう。
ならば許すはずもない。
許すわけにはいかない。
絶対に許してはいけない。
相手は自分に武器を向けたのだから。
「そんなに俺を殺したいか」
その意思表示なのだから。
嘘と涙は女の武器。
だから、それを使った時点で、ソウスケはシグレを許すつもりはなかった。
敵対したのだから、徹底的に叩き潰す。
それはシグレを失ってからの年月でたどり着いた答えの一つだった。
許してはならない。
許しは、悪事を働いた者を解放し、再び悪事を働かせる余地を作る事である。
だから、絶対に許してはならない。
確実に殲滅しなくてはならない。
「死ね。
消滅しろ。
二度とあらわれるな」
敵に対してならば当然の判断である。
その判断を下して、ソウスケは涙を流した。
(こんな事になるとはね……)
覚悟はしてたつもりだった。
既にそういう気持ちにはなっていたはずだった。
それでも。
一度は愛していた相手だ。
一度は夫婦となった相手だ。
もっとよりよい時間を過ごしたかった。
未練なのだろう。
それでも、ありえたかもしれない可能性に思いをはせた。
それを惜しんだ。
「そんなんだから……」
そんなソウスケに、
「そんなだから、あんたは…………!」
シグレは怒声ぶつける。
最後のあがきであったのだろう。
それを最後に意味のある言葉を発する事は出来なくなった。
しわがれた体ではもう何かをする事は出来なかった。
ただ、最後の一息になるまで、消滅する恐怖にさらされ続けていくしかなかった。
「…………」
最後に口から何かが漏れた。
それが声だったのか何なのか。
確かめる事は誰にも出来なかった。
否、一人だけ。
人の心を読むことが出来るユキヒコには、シグレの最後の意思が読めた。
それは決して心地よいものではなかった。
顔をしかめ、ため息を吐くほどにはやるせない気持ちになった。
だが、それでもユキヒコはそれをソウスケに伝えるつもりだった。
ソウスケに向けられた気持ちだったのだから。
(やだねえ……)
気が重い。
正直、伝えたくない。
だが、それは出来なかった。
どんなに辛くて苦しい事でも、伝えねばならない事はある。
それがどんな酷いものであっても、知らねばならない。
でなければ、正確な情報が伝わらない。
正確な情報が伝わらなければ、その後の判断を誤る。
だから絶対にそれを伝えるつもりだった。
『あんたがいなければ!』
『幸せだったのに!』
シグレが叫んだ声なき声。
遺言であるその想いを。
そして儀式は進む。
吸い取られた霊魂は神々に吸収されていく。
タダトキのは元がなんなのか分からないほどに粉々にされて。
神々の養分となり、消滅していった。
もう二度とこの世に戻ってくる事もないだろう。
再び生まれてくる転生も、神々などへの昇華も。
シグレの霊魂も同じように分解・吸収されていく。
ただ、それは神々のもとへではない。
彼女の目の前に立っていたソウスケへ。
彼女の霊魂はただの養分となって吸収されていった。
それもユキヒコが望んだ事である。
これから頼りにしなくてはならない存在である。
そんな彼には力をつけてもらいたかった。
また、一度は夫婦だったのだ。
他の誰かにとられるのもどうかと思った。
一度はイエルによって勇者にとられた。
この上、魔族の神々にとられるのもどうかと。
本人に尋ねたら、
「それなら……」
という事で了承してくれた。
だからシグレの霊魂はソウスケに提供した。
(まあ、これで)
多少、感傷的な理由もそこにはある。
(ずっと一緒になれた……のかな)
こんな形ではある。
でも、せめてこんな形でも、と思う。
今まで引き離されていたのだ。
こんな形でも一緒になれたらばと。
(余計なお世話だろうけど)
それでもこうせずにはおれなかった。
(これで……)
足下にある干からびた死体。
それを見てソウスケは幾分気が楽になった。
自分がこだわり続けてきた何かがようやく終わった。
それは確かである。
最善最良ではないにせよ。
もしかしたら最低最悪だったかもしれないけど。
それでも終わったのだ。
それに、気分もそれほど悪くはない。
すっきりしてるとは言いがたいが、なんとなく気が楽になっている。
何より、
(力が……)
わいてくる、みなぎってくる。
霊魂を注入され、吸収した事で体が軽くなった気がした。
話に聞いていた成長というものだとすぐに分かった。
それが何によってもたらされたのかも。
(シグレ……)
やはり未練はある。
断ち切る事は出来ない。
なんだかんだ言って、好きだった。
愛していた……とも思う。
それは今になってはもう確かめる事は出来ない。
だが、こうして自分のものに出来ただけでもうれしかった。
(これで一緒だな)
もう誰にも渡さない。
もう絶対に引き離されない。
そういう思いもある。
だが、それ以上に、
(これ以上、他の誰かと楽しめると思うなよ)
そんな気持ちの方が強かった。
もう自分に心を向けてないとは思っていた。
実際どうだったのかは分からないが。
だが、他の誰かとよろしくやっていた。
そんな相手から永遠に引き剥がしてやれるのがうれしかった。
もう意識もない、存在すらしてないから何も感じないにしてもだ。
どんな形であれ、自分以外の気持ちを寄せた相手とは会えない。
そんな事は絶対にさせない。
そんな思いが強い。
(俺が味わったもの。
お前も味わえ)
もう存在しない者への呪詛。
それがソウスケを動かしていた。
自分が感じた喪失感。
自分に降りかかってきた絶望感。
その全てをやり返してやりたかった。
(いつまでも一緒だ)
永遠に、魂が消滅するまで。
そのときまで、終わらない牢獄にたたき込む。
そう思うことで、ソウスケは少しだけ溜飲を下げる事が出来た。




