196回 処刑 2
「それでは、これより我らが神への供物を捧げる」
邪神官による宣言。
それが処刑の開始の合図となっていく。
「罪人たちよ、犯した罪をその魂で償うべし」
その言葉と同時に神への祈りが開始される。
邪神官を中心として神への道が開かれ、その力が呼び込まれていく。
それは処刑台に並んだ少年少女たちにまといつき、その霊魂を吸い出していく。
肌つや良かった彼らは、次々にしなびていく。
枯れた果物のように。
霊魂を奪いとられていってる証明だ。
たとえそうでなくても、彼らの生命が消えかかっているのは誰もが察した。
「やめろおおおおおおおお!」
「うわあああああああああ!」
悲鳴がそこらから上がる。
しかし儀式は止まる事なく進み、少年少女たちを朽ち果てさせていく。
残ったのは干からびた死体だけ。
その中にあった霊魂は、余すことなく神々に吸い取られて消滅していった。
同じような事が次々に行われていった。
貴族階級から始まり、町の主立った者たち。
有力者の子弟が次々と神々への供物となっていく。
いずれもエナジードレインによって霊魂そのものを奪われて。
次々に潰えていく少年少女たち。
その親の慟哭が広場に鳴り響く。
しかし止める事は出来ない。
見つめる者たちの体の自由は奪われている。
少年少女たちもそれは同じで、処刑台にあがってエナジードレインが終わるまで身動きがとれない。
唯一正気を取り戻すのは、今まさに神々に魂を奪われていく瞬間。
その時に余計な魔術や気力がかかってると、神々の介入がしにくくなる。
ささやかな誤差の範囲であるが、滞りがあるのはよろしくない。
そのため、ユキヒコはその瞬間にあわせて洗脳を解除していた。
そこで正気に戻った少年少女たちは、自分たちがどういう状況に置かれてるのかを理解する。
洗脳されて操られてたとはいえ、周囲の状況は目や耳に入っている。
正気に戻れば何がどうなってるのかくらいは把握する。
自分がこれからどうなるのかも。
「いやあああああああああ!」
「うわあああああああああ!」
誰もが悲鳴を口にする。
そんな事しても状況が変わるわけではないのに。
だが、何も変わらないのだから、それくらいはしたいのかもしれない。
これから魂ごとすりつぶされ、存在すら消滅させられるのだ。
そこまではさすがにわかってないが、自分の死がすぐそこまで迫ってるのはわかる。
彼らからすれば理不尽なこの仕打ちに、少しでも抵抗したいという意思が生まれても当然かもしれない。
無意味な行為というささやかな意思表示。
それが次々と進んでいく。
その光景に誰もが涙を浮かべていく。
あるいは真っ青になっていく。
死んでいく者たちの哀惜を抱く者がいる。
次は我が身と心配する者もいる。
そんな様々な思いが渦巻き始めた中で、少年少女たちの最後を彩る者たちが出てくる。
「あ!」
「そんな!」
タダトキとシグレが声をあげる。
それもそうだろう。
最後に出てきたのは、彼らの間に生まれた子供。
うろたえ叫び声をあげるのも無理はなかった。




