表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
176/428

176回 残された者の行方

(なるほどねえ……)

 近づいてくる勇者と聖女を眺めて呟く。

 能力以外にも何か掴めないかと思って頭の中を探っていたのだが。

 なかなか思うように進まなかった。

 女神の加護があるのか、ある程度以上の事は調べにくくなっていたのだ。

 それを突破してようやく更なる情報を手に入れられた。

(そんな事があったとは)

 まさか聖女の方に夫がいたとは思わなかった。

 そういう聖女や勇者もいるとは聞いてはいたが。

 今回、目の前にいる連中がそうだとは知らなかった。



(となると……)

 少しだけ興味がわいた。

 女房を奪われた夫がどうなっているのかが。

 今も生きてるかどうかは分からない。

 しかし、消息を掴んでおきたかった。

 特に理由や意味があるわけではない。

 ただ、どうなってるのか知りたかった。

(どうしてるんだろう)

 教会に引き離され、女房を奪われてから。

 その男がどう生きているのかが知りたかった。

 自分と似たような境遇だからかもしれない。

 聖女シグレの夫の場合、ユキヒコよりも更に悲惨であるが。

 幸いにも居場所はだいたい分かる。

 それもシグレの頭の中を覗いた時に判明している。

(行ってみるか)

 思い立ったユキヒコは、体をふわりと空に浮かべていった。



 目的である聖女シグレの故郷には問題なく到着した。

 県都からさほど離れてない町だったからだ。

 そこの住人をいつものように洗脳し、必要な情報を聞き出していく。

 それで分かった事は、目的の人物が既にその町にはいない事だった。

 シグレの後を追うように町を出ていったのだという。

 それからどうしてるのかはほとんど分かってない。

 ただ、シグレを追っていったのならば県都に行ってるとは思えた。

 それならばとユキヒコもそちらへと向かう事にした。

 どうせ最後はそこに向かう予定だったのだから。

 ついでに、町の者達も県都に向かわせた。

 今後の事を考えて。



 そんな町の者達よりも先に県都に到着する。

 空から侵入したユキヒコは、そこでも同じようにして目的の人物を捜していった。

 洗脳し、全員の頭に目的とする人物の姿を浮かび上がらせる。

 町の者達を洗脳した際に、夫だった男の姿も覗き見ていた。

 その姿を洗脳した者達の頭に浮かびあがらせ尋ねていった。

 この姿をした者を知らないかと。

 広範囲にわたって尋ねた結果、答えは意外と早く判明した。



 シグレの夫は行商人として働いていた。

 町を出てからそこに潜り込み、生計をたてていたようだ。

 少しでも妻の近くに、出来るなら接触を試みようと。

 その努力は何一つ報いられる事は無かったが。

 それでも彼なりに懸命に動いたのだろう。

 個人として出来る全てをこなしながら。



 だが、教会という大きな組織に抗えるわけもなく。

 社会全体も夫の味方にはならなかった。

 そのあたりはユキヒコの時と同じである。

 世の中は個人の関係よりも、勇者と聖女を優先した。



 夫の努力は目を見張るものではあった。

 単身上京し、慣れない仕事に飛び込んで懸命に働いた。

 単なる一個人では何も出来ないと思ったのだろう。

 少しでも出世する為に、それこそ身を粉にして働いていた。

 慣れない仕事に打ち込み、下働きから初めて馬車を任されるようになっていた。

 それだけでもとんでもない出世である。



 この世界、出世はまずありえない。

 家業を継いでるならともかく、下働きからの成り上がりはそうそうあるものではない。

 余程の才覚を示さない限りは。

 それが馬車一つを任されるまでになるとは、余程の事である。



(そこまでのし上がるとは……)

 それを知ったユキヒコは、素直に賞賛の念を抱いた。

 道は違えども同じような思いを抱いて行動した者としても尊敬をする。

 まだ出世の可能性のある義勇兵と違い、市井でのし上がるのは実力だけでは足りない。

 出自や人脈なども必要になる。

 それらに認められてようやく上に行く道が見えてくるのだ。

 義勇兵よりも難しい道であるかもしれない。



 それを成し遂げた男に、より一層の興味がわいた。

 ユキヒコは早速その男の所へと向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


_____________________

 ファンティアへのリンクはこちら↓


【よぎそーとのネグラ 】
https://fantia.jp/posts/2691457


 投げ銭・チップを弾んでくれるとありがたい。
登録が必要なので、手間だとは思うが。

これまでの活動へ。
これからの執筆のために。

お話も少しだけ置いてある。
手にとってもらえるとありがたい。


_____________________



+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ