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172回 勇者タダトキと聖女シグレ

(しかし……)

 県の中心地へと戻りながら、タダトキは考えてしまう。

 こうして来た道を戻るように進んでいる理由を。

 あまり思い出したくもない事だった。

 いつもと違い、全く成果らしい成果があげられてない。

 それどころか、タダトキのいない所で好き勝手暴れられてしまっていた。

 挙げ句には後方を脅かされ、一旦戻らざるえなくなっている。

(どうなってる?)

 苛立ちもあるが、どうしても疑問が浮かんでしまう。



 今回の魔族の動きはとにかく不可解だった。

 今までにないほど頭を使って動いている。

 おかげでほとんど姿を捕らえる事ができなかった。

 全くというわけではないが、敵を撃退するには至ってない。

 こんな事は勇者になって以来初めてだった。



 何ら成果をあげる事が出来ず、ただただひっかき回された。

 被害は拡大するばかりで沈静化はされてない。

 それは勇者としての使命感に燃えるタダトキを苛立たせた。

(情けない……)

 浮かんで来るのは自責の念。

 それと同時に、こけにしてくれた魔族への怒り。

 その二つによってタダトキは焦燥感にかられていた。



「少し落ち着いてください」

 そんなタダトキにシグレが寄り添っていく。

「そんな事では成せる事もなせません」

「…………そうだな」

 最も付き合いの長い聖女の言葉に、タダトキは苛立ちを少し抑える。

 完全に静まったわけではないが、それでも頭を冷ますようつとめていく。

「まだ全てが終わったわけではありません。

 魔族を倒す機会はあります」

「ああ、分かってる」

「ならば、落ち着いていきましょう」

 そういって笑顔を浮かべるシグレ。

「大丈夫、女神イエル様が勝利に導いてくれます」

 そう言うシグレの笑顔に、タダトキはつられるように笑みを浮かべる。

 そんな事で気持ちが少し落ち着いた。



「いや、すまなかった。

 また取り乱した」

「あら、そうなの?」

「ああ。

 嫌らしい動きをするあいつらのせいでな」

 実際、動きに翻弄されていた。

 それは否めない。

 認めるのは悔しかったが。

「今度の相手は上手のようだな、俺よりも」

「どうかしら?」

「そう思わないのか?」

「それは分かりません」

 そう言ってシグレは首を振る。

 実際、彼女も分かってるわけではない。

 相手がどんな奴なのか、今はどういう状態になってるのか。

 それが分かる程の能力は無い。

 彼女が無能なわけではない。

 手がかりが少なく、真相を当てる事が出来ないだけだ。



「でも、だからと言って焦っても結果には繋がりません」

「まあな……」

「それは今までだってそうだったでしょう?」

「まったくだ」

 実際、これまでの出陣で失敗をするのは、焦ってる時だった。

 事が思ったように進まない、予想外の事が起こってしまう。

 そうした時に慌てて対処しようとした時ほど、より大きな問題を起こしてしまっていた。

「だから、慌てても仕方ないわよ。

 起こった事はもうどうしようもないのだから」

「ああ、分かってる」

 だから、これ以上何かが起こらないように、何も起こさせないようにするしかない。

「今は問題が起こってるところを追いかけるしかありません。

 辿っていけば、いずれ敵も見えて来るはずだから」

「そうだな……」

 最もな意見に、そう答えるしかなかった。

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