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168回 手当たり次第に 8

 ユキヒコが魔族に次の行動を提案し、それらが実行された後。

 村や町から追い出された者達が勇者と聖女達のいる市街へと向かっていく。

 それらは後方が脅かされてる事を伝える証言と証拠である。

 そうしておけば、目の前の魔族だけを相手にするわけにはいかなくなる。

 今後どうすればいいのか考える事になるだろう。

 そうすれば、嫌でも混乱する。

 目の前の敵をまず片付けるべきか。

 それとも、後方に回った敵を先にどうにかするべきか。

 単純に考えても、こうした迷いは出て来るはずである。



 勇者と聖女としては、これらを放置するわけにはいかない。

 目の前の魔族も片付けねばならないが、後方に回った敵を放置するわけにもいかない。

 どちらも脅威である以上、勇者として放置は出来ない。

 だが、同時に二つの事に対処は出来ない。

 まずはどちらかに注力せねばならない。



 そうなった場合、必ず意見は割れる。

 勇者もどちらから先に片付けるべきか迷うだろう。

 勇者を受け入れてる者達もそれは同じだ。

 我が身がかわいいならば、勇者を手元に留めておきたいと考える者。

 だが、後方が脅かされてしまっては、自分達の今後が心配だと考える者。

 どちらもそれなりの理がある。

 簡単に意見の一致をみる事はないだろう。



 勇者としても慎重にならざるえない。

 目の前の敵を放置も出来ないからだ。

 かといって背後をおびやかされるのも危険である。

 ならばどちらかだけでも、と考える事だろう。

 しかし、そこで問題が浮かんで来る。

 出撃したところで、敵をとらえる事が出来るのか、という事だ。



 これまで何度も肩すかしを食らわされてきた。

 出撃しても敵をとらえる事が出来ない。

 今度もそうなるのではないかと考えていた。

 その為、迂闊に出撃は出来なかった。

 また空振りになるのが怖いというのもある。

 それに、出撃した隙を狙われる可能性もある。



 こういった考えが出てくる事で、どうしても腰が重くなる。

 勇者と言えども迂闊な事は出来ない。

 しかし、何もしないでいるのも問題だった。

 そうしていると、民衆が疑念や不信感を抱くからだ。

 勇者と聖女はいったい何をしてるのかと。

 もっともな話である。

 彼等が求める問題の解決が為されてない。

 にも関わらず、そうするべき勇者と聖女が何もしてない。

 これに不信感を抱かない者はいないだろう。



 それは事情を知らない民衆に限った事ではない。

 領主の近くにいる役人や警備の兵なども含まれる。

 教会の者でも例外ではない。

 それは情勢が分かってないから、というわけではない。

 分かっていても不安を懐く者達は出てくる。

 そういう者達から不満があふれてくる。



 その一方で、やむをえない事情を理解する者もいる。

 何も知らない者でも、『きっと何か事情があるのだろう』と納得する者もいる。

 そうした者達は、不安を懐いても不満を口にする事はない。

 今はただ勇者と聖女を信じようとしていた。

 しかし、そうした者達は少数派で、全体を落ち着かせる程の力にはなりえなかった。



 そんな風に内部が混乱してくれる事がユキヒコの望みだった。

 結果として、出撃にしろ待機にしろ、どちらに傾いても構わなかった。

 時間が稼げればそれで良い。

 そうすれば、やりたい事をやる事が出来る。

 それが終わるまでは、勇者と聖女には行動を控えていてもらいたかった。

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