167回 手当たり次第に 7
(それじゃ、こっちもやりますか)
テレパシーで味方に指示を出していたユキヒコも行動を開始していく。
勇者にかち合わないように魔族を誘導していたが、それだけで終わるわけにはいかない。
ユキヒコもそれなりの戦果をあげねばならない。
裏切り者のユキヒコの信用は、まだまだそう高くはないのだから。
グゴガ・ルや邪神官達からの信頼はそれなりに得られるようになっている。
彼等ならばユキヒコの提案をそれほど問題無く受け入れてくれる。
とはいえ、全体に浸透してるわけではない。
もう少しユキヒコが有用な事を。
そして、信用出来る事を示さねばならない。
その為には兵隊を動かすだけでは駄目だった。
ユキヒコ自身も戦って戦果をあげねばならない。
そんなわけでユキヒコも敵の攻略にのりだしていく事になる。
やはり、ある程度は汗を流さない事にはどうにもならない。
指示を出してるだけだと、顎で使われてると思われてしまう。
そうならないように、それなりの働きをしなければならなかった。
このあたり、新参者のつらさである。
そんなユキヒコは、単身敵地に潜入していく。
単独で村や町に入り込むのだ。
これだけならばそれほど問題は無い。
精神介入出来る超能力があるので、相手を洗脳すれば良いのだから。
そうやって中に入ってからは簡単だ。
居合わせた者達の精神を操作していけば良い。
物資の強奪も忘れない。
手足を破壊する前の男共に、馬やロバ、馬車などを使わせていく。
そうやって魔族に物資を無傷で手渡し、それからいつもの処置を施していく。
女は呼び出した魔族の所に向かわせていく。
それ以外は互いに手足を破壊し、片目を潰させる。
ほとんど労力を費やす事無く、ユキヒコは町や村を壊滅させていった。
それらをユキヒコは淡々とこなしていった。
おかげで魔族は、ほとんど損害を出す事なく成果を得ていく。
その事に多くの魔族は喜んだ。
労せずして成果が得られるのだから。
ただ、一部は不快感を表しもした。
『これだけの力があるなら、なぜ最初から使わないのだ?』
もっともな話である。
最初からこうやってくれれば、面倒な攻略をしなくて済むのだから。
そんな彼等にユキヒコは、
「俺だけ働いてどうすんだ?」
そう言い返していった。
「俺が全部やって、あんたらは怠けるのか?」
そう言われてはさすがに反論は出来ない。
「それに、俺がいない所ではどうする?」
それももっともな話だ。
ユキヒコは一人しかいない。
同時に幾つもの場所を襲撃出来るわけではない。
いない所では魔族が何とかするしかない。
「だから、他はそっちに任せるよ。
戦い方をおぼえる必要もあるし」
それもそうである。
実戦経験は実戦でしか得られない。
それを怠れば、戦場で悲惨な目にあう。
「だから、ある程度はそっちでやってくれ。
手柄も立てたいだろうし」
ここまで来ると、大半の魔族は不平を言わなくなる。
ユキヒコの言い分ももっともだからだ。
それに、ユキヒコが手を出してるのは、攻略が難しい所がほとんどである。
最も面倒な所を片付けてくれるのだから、文句をぶつけるわけにもいかない。
それでも不満はいくらか残る。
やはりユキヒコが中心になってくれれば楽が出来ると。
しかし、ユキヒコはそれらに首をふる。
「こっちもこっちでやる事があるから」
そう言いながら次の提案をしていった。




