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159回 勇者と聖女、その対策 7

『────それが答えか?』

『ああ、俺に思いつく対抗手段だ』

 遠く離れた邪神官とのやりとり。

 その中で思いついた手段を伝え、答えを求める。

 邪神官達はさすがにすぐに答えを出せないでいる。

 だが、迫って来る強力な存在への対処を決めねばならない。

 迷ってる時間もそれほど無い。

『なら、やるしかないな』

 決断は意外と早かった。

 悩んだり考えたりした素振りはない。

『いいのか?』

 ユキヒコの方が心配になる。

 そんなあっさり決めて良いのかと。

『かまわん』

 邪神官の答えはあっさりしたものだった。

『おそらくそれが一番の手段だろうからな。

 こちらもそれ以上に良い手段は思いつかん』

『そうか』

『では、具体的な手段を聞こう。

 何をどうすればいい?』



 手段は至って簡単だった。

 基本的には今までやってきたのと同じ事を繰り返す。

 町や村を襲い、女と物資を奪う。

 男と老人などはまともに活動するのが難しい傷を負わせて解放する。

 それを一斉に行うだけだ。

 ただ、それに増援に来た者達も加わってもらう。

 今回は、出来るだけ同時に広範囲に襲撃をかけるのが鍵になる。



 いかに強力とはいえ、相手は少数である。

 同時に二つ三つといった問題に対処出来るわけではない。

 それを見越して、同時多発で襲撃をかける。

 あらゆる村と町を一気に落とす。



 当然ながら、勇者達に対応する時間は無い。

 一斉に起こった襲撃を防ぐ事は出来ない。

 まずもって離れた所に瞬時に移動する手段が限られる。

 全く無いわけではないが、そう何度も使えるものではない。



 そうやって相手を混乱させる。

 どこで何が起こっていても、何から手をつければ良いのか分からなくさせる。

 そうしてる中で少しでも奇跡を使ってくれればありがたい。

 その分だけ勇者達の力は落ちる事になる。

 多少ではあるが弱体化ははかれる。

 まずはそれが目的となる。



『だが、そう上手くいくか?』

 邪神官にも懸念はある。

 確かにそうするしかないとは思う。

 しかし、相手がこちらの思うように動いてくれるのか、という疑問もある。

 もしかしたら、相手も何かしらの対処をしてくるかもしれない。

 そうなった場合はどうするのか?

『それはさすがにどうしようもない』

 それがユキヒコの答えだった。

『どうにかしたいけど、こればかりはな』

『なるほど』

 その答えに邪神官は落胆する。

 彼等からすれば超常的な力を持つユキヒコ。

 そんな男でもどうにも出来ないという。

 ならば、邪神官達に出来る事はほとんど無いだろう。

『せいぜい、相手が来る前にとんずらする事だな。

 捕まらなければどうとでもなる』

 それしかない。

 他に良い考えがあるわけでもない。



『ただ……』

『なんだ?』

『やばくなったらすぐに逃げてくれ。

 女や物を置いてもな。

 男共の始末も放置していい。

 とにかく逃げてくれ』

 それはそうするしかないだろう。

 敵が迫ってるのに悠長に処理を行ってるわけにはいかない。

 生き延びる為にも迅速な撤退は必要な事だ。

 ただ、ユキヒコの狙いはそれだけではない。

『怪我人とかが残ってれば、奴らもそれに奇跡を使うだろうしな』

 そうやって手数を減らす事。

 それが狙いの一つになる。



『それをやらないなら、勇者共に恨みをもつだろうし』

 このあたりは長期戦を見据えての事である。

 治療が出来るのにやらなければ、それを恨みに持つ者も出て来るだろう。

 貴重な奇跡を温存するならば、見捨てるという選択肢も必要になる。

 だが、それをした場合に民衆に与える影響を考えると悩ましいものがある。

 もし出し惜しみをすれば、勇者や聖女への評価に傷がつく。

 表だって文句は言えないだろうが、見えない所で陰口をたたくようにはなる。

 それらは少しずつ蔓延する事で、社会に甚大な問題を与える可能性がある。

 直接戦力低下にはつながらないだろう。

 だが、こうして生まれた不信感や不満が、様々な面で齟齬を生み出すかもしれない。

 そうなった場合、集団としての機能が大きく低下する。

『そうなる下地を作ってやろう』

 これがユキヒコのもう一つの狙いだった。



『そう簡単にはいかないだろうけど。

 でも、少しでも可能性があるならやっていこう』

 下手な鉄砲も数打ちゃ当たるである。

 一つ一つは大した事がなくても、数多く仕掛ければ一つくらいは効果が出るかもしれない。

 それを狙ってのものだ。

 緻密とは言えないだろう。

 だが、緻密な謀略というのが成功するわけではない。

 むしろ、緻密であるが故に、小さなしくじりで全てがご破算になる可能性がある。

 そんなものよりも、適当大雑把な仕掛けを幾つも繰り出していく。

 その方が良いとユキヒコは考えていた。

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