157回 勇者と聖女、その対策 5
グゴガ・ルに伝えた事で、魔族に情報を流す事が出来た。
おって邪神官やイビルエルフに伝えればこれは完了する。
それからユキヒコが考える対策を伝えていけば、それなりに動いてくれるかもしれない。
もっとも、ユキヒコを置いて逃げる可能性もあるが。
そこは博打になる。
さすがにユキヒコも魔族を意のままに動かす事は出来ない。
能力を使えばある程度は洗脳は出来るだろう。
意識を、精神を操る事は出来る。
しかし、それで動かせる数には限りがある。
増援を含め4000という軍勢全部を動かす事は出来ない。
この洗脳力を高まれば、全てを操れるかもしれない。
なのだが、今はそんな事は出来ない。
指揮官あたりを操るにしても、それで全体を統制する事は出来ない。
指示を受ける部下が勝手に動くだろうからだ。
無理や無茶な内容ならば尚更である。
なので、あくまで魔族の者達の意志に任せるしかない。
彼等自身がどうやって動くかを考えてもらうしかない。
その為の情報を流し、作戦の材料を提供するしかない。
ある程度の要望も伝えるが、それで彼等がどうするかは彼等次第となる。
グゴガ・ルに先に伝え、情報の独占などを阻むくらいはするが。
だが、後方の部隊に働きかける事は出来た。
これで何らかの対策はとるだろう。
それが撤退という形であったとしてもだ。
それはそれで良い。
無駄な損害を出さないというなら、それで正解だ。
ただ、ユキヒコはそんな消極的な事をするつもりはない。
いずれ対決せねばならない相手である。
なんとしてでも勝たねばならない。
その為に出来る事を探し、構築し、倒さねばならない。
そうしなければならない時が今やってきただけだ。
(さて……)
仲間への連絡は済ませた。
あと、問題なのはこれからである。
(どうやって切り崩していくかな)
あれこれ考えるも、妙案は出てこない。
彼我の戦力差は半端な策などものともしない程大きい。
それをどうにかする程の何かを絞り出すのは難しいものだ。
(まいったな)
悩みながらもやれる事をやっていく。




