154回 勇者と聖女、その対策 2
強力な奇跡を幾つも持っている。
それによる戦闘力の強化。
このあたりが勇者と聖女の強みである。
だとして、それにどうやって対処するのか。
どうやって対抗するのか。
それが悩みどころだった。
まず、正面からぶつかったら勝ち目はない。
断言する事は出来ないが、勝算は低くなる。
勝つにしても損害が大きくなってしまう。
これはどんな戦いでもそうだろう。
強力な相手と馬鹿正直に戦えばこちらにも大きな損害が出てしまう。
可能であるならば相手の力をそぎ落としながら戦いたいところだった。
少しずつでも奇跡を使わせる。
そうやって相手の手数を減らす。
それらが尽きた所で一網打尽にする。
それが出来れば理想的だった。
ただし、これをやるとなると時間と手間がかかる。
相手に奇跡を使わせる為にあの手この手を考えねばならない。
それをやる為に様々な手段を講じる必要がある。
そんな余裕はない。
手数も少ないし、やるとなればやはり損害が出てしまう。
今の状況ではそれは避けたいところだった。
それをやるには手持ちの兵力が少ない。
下手しなくても全滅する可能性がある。
それでも勇者を倒せるならまだ良い。
強力な勇者と聖女が相手ならば、1000人余りの部隊の損失は大幅な黒字になる。
残酷な損益計算をするとそうなる。
その損失の中心がゴブリンであるならばなおの事。
出産数が多く成長の早いゴブリンは、雑兵としては使い勝手が良い。
使い捨ての数合わせとしては効率的なのだ。
実際、それくらいしか使い道がないとされてるのがゴブリンである。
持って生まれた能力の低さと、劣悪としか言えない特性。
その両者があいまって、雑兵としか使えないのがゴブリンである。
数を頼んでの突撃くらいしか用途がないと考えられている。
あるいは盛大な囮などだ。
それはそれで間違ってはいない。
しかし、グゴガ・ルなどをはじめとしたゴブリン達はそうではない。
やり方を教え、訓練を施し、実戦による経験を積み重ねた。
その結果、能力は高まり、技術もおぼえ、悪しき特性が消えた者もいる。
そんな者達を簡単に使い潰すわけにはいかない。
(となると)
現状の戦力でどうにかするしかない。
そして、使えるのは自分一人だけ。
(やるしかねえか)
腹をくくってユキヒコは、勇者と聖女とあたる事とした。
やりたくはなかったが。




