153回 勇者と聖女、その対策
(けど、まさかこんなのと遭遇するとは)
敵地に潜入し、先に進む。
その途中でまさかの遭遇を果たしてしまう。
(なんでこんなに早く来てるんだよ)
そう思って見つめる先。
そこには、それとはっきり分かるほど強力な気配があった。
勇者と聖女である。
覚醒階梯3によってえられた超感覚。
それにより遠く離れたものでも感知出来るようになった。
その感覚によって掴めた情報だった。
勇者と聖女の存在を。
そして、更に彼等の能力すらも把握していく。
結果は恐るべきものだった。
実際に判明した彼等の能力は異常というしかなかった。
桁違いというものではない。
もはや異次元というべきものである。
人間の枠組みを超えている。
一例として勇者である日摘タダトキの能力を上げてみる。
ユキヒコが把握した彼の能力は次のようなものだった。
<日摘タダトキの能力値>
体力 112
反射 103
判断 121
心意 116
教養 +26%
工作 +35%
野外活動 +37%
探索発見 +35%
礼儀作法 +26%
戦術 +23%
剣術 +56%
弓術 +36%
柔術 +27%
盾術 +29%
槍術 +48%
<日摘タダトキの能力値>
このあたりは基本的に人間の範疇におさまっている。
平均的な人間よりは優れてるが、それでも優れた人間という程度だ。
能力も技術も熟練した人間なら到達出来るという範囲である。
だが、問題なのは女神イエルが与えている奇跡だ。
<イエルの奇跡>
『弱点看破』
相手の隙、攻めやすい所を見つける。
相手からの攻撃も、軌道を読み避ける・受ける方法が瞬時に分かる。
『浮遊』
ほんのわずかだが地面から浮かび上がる事が出来る。
これにより足場による不利を全く受けない。
高所からの落下であっても、落下速度を調節して無傷で着地出来る。
ただし、自由自在に飛行出来るわけではない。
『見通す目』
暗闇や濃霧の中などでも視界を確保出来る。
これにより視界の悪化による悪影響を受ける事がない。
『戦闘能力強化』
戦闘に関わる事に限り、能力や技術を向上出来る。
『防護』
相手の攻撃を受け止める障壁を作る。
一定の威力までを吸収する。
限界を超えたらその瞬間に消滅する。
こちらからの攻撃や、防御・回復の効果は受ける事が出来る。
『刀勢の延長』
攻撃距離が伸びる。
これにより、離れた所にいる敵も攻撃出来る。
また、攻撃の奇跡・軌道上にいる敵をも巻き込む。
複数の敵を一度に攻撃可能となる。
『士気の鼓舞』
味方と見なした者達の士気を高める。
これにより、味方は怯んだり精神的な影響を受ける魔術などから守られる。
恐れを知らない味方は引き下がる事無く攻撃を行えるようになる。
また、効果がある間は疲れる事無く行動を継続する事が出来る。
『采配』
味方に有利な状況を作り出すための方法が分かる。
劣勢すらも挽回出来る方法を見つける。
これにより戦況を覆す事が出来る。
優勢であれば更にその優勢を続ける事で敵勢を圧倒出来る。
<イエルの奇跡>
こういった奇跡を幾つも持っている。
しかも、それぞれの奇跡を複数持っている。
一つ使ってもそれで終わりという訳ではない。
二度三度と奇跡を繰り出せる。
勇者が強いわけである。
こんなものを何度も使われれば、どんな大軍も歯が立たない。
(嫌になるな……)
こんなの相手にどうやって戦えというのか。
また、これが勇者一人というわけではない。
付き従う聖女も同じように様々な奇跡をもっている。
それらを何回か使える程に。
その相乗効果、互いに連携して使った場合の威力足るや、想像するに余りある。
仲間である魔族の軍勢など、あっという間に吹き飛んでしまうだろう。
知る事でユキヒコは絶望的な気分になっていく。
想像でしか把握出来ない恐怖。
今まではそれしかなかった。
しかし、実際に知ってしまった事で陥る絶望。
今はそれを味わっている。
相手を知らねば対策のしようがない。
だが、知ったところでどうにもならない力の差があった場合どうすればいいのか?
どちらがどれだけマシなのだろうか。
そんな事を考えてしまった。
(けど、どうにかしないと)
気を取りなおして対策を考える。
避ける事が出来ないのだからどうにかするしかない。
問題はそれをどうやって行うかである。




