152回 先に敵地に潜入し 2
伝令を追跡するように更に敵地へと入っていく。
久しぶりに人の町並みを見て、少しだけ心が落ち着くのがシャクだった。
だが、それでも仕事は仕事。
可能な限り人の頭の中を読んだりして情報を得ていく。
とはいえ、重要なものが得られる事はない。
一般人に貴重な情報があるわけもないし、領主などを調べるには時間がない。
どうしても表層的な部分だけを調べるにとどまってしまう。
超能力と言うべき力をもってしても、出来る事にはやはり限りがあった。
ただ、通り過ぎていった村や町、市街は大小様々な対策をしていた。
伝令によってもたらされた情報で警戒を強めているのだ。
対策の早いところだと、村や町から人を移動させて市街に入れてる所もある。
その分、広い範囲を制圧しやすくはある。
人がいないのだから、村や町に魔族が入るのは簡単だ。
だが、敵を殲滅するという意味ではやりにくい。
市街に集まってるだけにまともに動ける者が多いからだ。
(少しまずいか?)
やってやれない事は無いだろうが、損害は大きくなる。
それが不安ではあった。
だが、それ以上に伝令が危機を伝えている事が気がかりだった。
それが中央にもたらされたらどんな事になるのか。
何らかの対策をとるのは確実だ。
そうなった場合、備えはより強固なものになるだろう。
(そうなる前にどうにかしたいけど……)
さすがにこればかりは簡単にどうにかなりそうもない。
そこが泣き所だった。
何よりも最悪の情報が耳に入る。
勇者の出撃。
それを聞いたのは、先触れの使者が走っていった事でだ。
指示などを伝える為に走るそれが通り過ぎる時、その頭の中を覗いた。
それによって情報を得る事が出来た。
(まずいな)
急ぎ先触れの意志に介入し、その情報をそこから先に伝えないようにする。
同時に、その情報を仲間の魔族に伝えるために、伝令に指示を出しておいた。
洗脳された伝令は、確実に魔族に情報を伝える事になる。
ユキヒコの言伝と共に。
勇者の話を聞いて、更に先へと向かっていく。
対応が出来るとは思わないが、少しでも何かを掴んでおくためだ。
さすがにユキヒコも勇者や聖女と戦える程の自信は無い。
だが、事前に何かを知っておけば対応出来る事もあるかもしれない。
それを探る為に相手の領域に入っていく。




