151回 先に敵地に潜入し
潜入した隣接領の市街。
ユキヒコは一人でそこまでやってきて、情報を探っていた。
相手の意識に介入する能力はますます磨きがかかり、門番などを簡単に騙す事が出来る。
その為、怪しまれる事もなく市街を囲う防壁内に入る事が出来た。
当然ながらそれは領主の館も含まれる。
内部に入って人々の意識を操作。
そうして今ここで何が行われてるかを聞き出していく。
その結果、後方に向かって勇者出動の要請が為される事も把握した。
制圧した市街。
その隣の領地。
もう少し早くそこに来る事が出来れば、その伝令を潰す事も出来ただろう。
だが、ユキヒコがやって来た時にはもう出発した後だった。
残念ながら、今から何をしても手遅れだった。
(しょうがないか)
起こってしまった事はしょうがない。
だが、分かった事は報告しなければならない。
この事をユキヒコは、急いで邪神官達にしらせた。
同時に、様々な作業を急がせた。
村や町を襲い、それらの間を行き交う者達を潰させた。
少しでも相手に与える損害を大きくするために。
ここの領主も対策をしていった為に、それらも大きな効果をあげる事はなかったが。
それでも、急ぎ対応した分だけそれなりの打撃も与えはした。
現在、この地域の半分ほどの村や町は壊滅している。
そこに居た若い女以外の者達は、体を不自由にされて市街へと追いやられていった。
幸いな事に、増援も到着している。
兵力は増大し、魔族の総兵力は4000にまで膨れあがっている。
その大半はゴブリンだが、それだけの数がいれば相当な事が出来る。
今まで手が回らなかった地域にも兵力を割き、道路を封鎖する事が出来ている。
また、人員の交代も出来るので休息を取らす事も出来る。
ユキヒコが行動を共にしてきた部隊は、ここに来てようやく一息吐く事が出来るようになった。
そんな魔族に現地は任せ、ユキヒコは更に奥地へと向かっていく事にした。
やってくるという勇者と聖女がどの程度なのか見極める為だ。
相当強力なのは分かってるが、正確な強さは分かってない。
それを出来るだけ調べておきたかった。
いずれ対決する事になるのだから、情報は必要になる。
それを調べる事が出来るのはユキヒコしかいない。
話を聞いた邪神官は即座に承諾。
ユキヒコによる偵察を求めた。
彼等も事の重大さはよく分かっていた。
勇者と聖女相手ではどうにもならないと。
それでも立ち向かわねばならないなら情報は必要になる。
「頼む」
そう言って邪神官はユキヒコに託した。
より良き何かを手にする事が出来るように。
「ああ」
頷いてユキヒコは出発した。




