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148回 勇者、立つ 3

「大変な事になってるな」

 出動要請とそれに伴う現状報告を読んでの感想である。

 勇者である日摘タダトキの声は表情共々渋いものである。

「今度も腹をくくっていかないとな」

 勇者として選ばれてから十数年。

 その間にこなしてきた使命はいずれも厳しいものだった。

 それを乗り越えてきた実績はあるが、だからといって状況を楽観する事は無い。

 常に油断せず、万難がふりかかる事を覚悟している。

 だからこそ今まで生き延びてこられたと考えていた。

 今回の出来事も何一つ甘く見てはいない。



「お前達にも苦労をかけるが、頼むぞ」

 共に出立する事になる聖女達にもそう声をかける。

 既に彼の妻となってる四人の聖女は、何を今更といった表情でそれを受けとめる。

「分かってるわよ」

「いつもの事でしょう」

「楽な使命なんて一度も無かったじゃない」

「大変な事だから勇者が立たねばならないのだし」

 そう言って笑っている。

 全員、勇者がどういったものかをしっかり理解している。

 楽な作業なら勇者が呼ばれる事がないのを。

 必然的に厳しい事件が舞い込んでくる事を。

 それに立ち向かわねばならないのだから、どうしても苦しい事になるのも。

 それでいて、決して退く事がないことも、退くわけにはいかないことも。



「私たちだって聖女です」

「危ない所にいくのも今更だろ」

「苦しいからこそ、私たちが助けるんじゃない」

「イエル様もその為に私たちを選んだのですから」

 聖女である彼女らも覚悟は決まっている。

 選ばれたのは自分の意志ではない。

 だが、勇者を助けようと思ったのは彼女らの選択だ。

 それに殉じる覚悟もある。

「だから、一緒に行きましょう」

「すまんな」

 そう言ってタダトキは彼女らの気持ちを受け止める。

 今までそうして来たように。

「また助けてもらう」

「もちろんですよ」

 聖女達に否やはない。



 これまで何度もの、何年間も勇者と聖女として活動してきた者達だ。

 その中でこなしてきた数々の難題と、それを共に乗り越えてきた絆がある。

 問題を前に尻込みするような者はいない。

 年齢を重ねた事による落ち着きもある。

 既に全員若者というわけではない。

 最年長のタダトキは31歳。

 聖女達も最年長で27歳。

 15歳で成人扱いのこの世界では充分な大人である。



「それで、今度の使命はどのような?」

 この聖女達の筆頭的立場であり最年長の日摘シグレが詳細を求める。

 まだ詳しい事を聞いてないのだ。

 それに応じてタダトキも渡されたばかりの情報をもたらしていく。

「戦場近くの辺境だ。

 そこで魔族が暴れてるらしい。

 既に幾つもの村や町が壊滅してる」

「まあ……」

「そんな……」

 それを聞いて全員の顔が曇る。

「それはどのくらい前の話なの?」

「これが到着した時点から半月は前の話らしい」

「それじゃあ……」

 全員の顔色が更に曇る。

 今から半月前までの段階でそこまで被害が拡大してる。

 となれば、今はもっと広範囲が魔族の蹂躙を受けてる可能性がある。

 これから現地に向かう間に、更に悲惨な事になってもいるだろう。

「また後手に回ったのか」

「そうなるな」

 タダトキのため息を漏らす。

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