表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
147/428

147回 勇者、立つ 2

 それでも人々は自分に出来る事をしようとしていく。

 敵が来るなら迎撃態勢をとらねばならない。

 その為の準備をしていく。

 防御に必要な設備をととのえたり、出来る限りの備蓄を始めたり。

 それがどこまで効果があるのか分からないが、蹂躙を受けないように出来る事をしていこうとしていた。



 領主もそれは同じである。

 流れ込んで来た者達から敵の行動を聞き出していく。

 それをもとに対策をたて、実行出来るものからこなしていく。

 真っ先に必要なのは、領内の村や町から人を避難させること。

 魔族は小さな村から狙ってくる。

 ならば、狙われる前に避難させていく。

 そして市街に避難させる。

 こうしておけば、これ以上の被害者を出さないで済む。



 ただ、既に襲われてる村や町もあり、無傷というわけにはいかなかった。

 そういった村や町にいた者達も市街で保護をしていく。

 しかし、既に傷つけられた者達なので、扱いが大変だった。

 治るあてもないので、どうしても負担になる。

 それを狙っての所業なのが分かるだけに腹も立つ。

 だが、どれ程憤ろうとも起こってしまった結果は覆らない。

 それこそ奇跡が起こる事を願って、体をまともに動かせない者達を保護していくしかなかった。



 市街を治める領主は、この状況をすぐに報告。

 効果的な対応を求めていった。

 その上司にあたり、日本でいうならば市町村の首長にあたる領主は、事態の重さを即座に見て取った。

 とても自分の権限程度ではどうにもならないと。

 なので、更に上の都道府県知事にあたる領主に報告、対策を求めていった。



 知事にあたる領主も、状況のあまりの酷さを察した。

 戦いがむごいものであるのは重々承知してはいた。

 だが、今回は今までにない程の悲惨さをもたらしている。

 そんな事をしでかす敵にかすかな恐怖と、それを覆い尽くすほどの怒りを感じた。



 即座に彼は権限の許す範囲で最大の対策をとっていった。

 兵力の派遣、物資の手当、治療が出来る神官の募集を行っていく。

 また、今回の事態が普通でない事を鑑み、更に上位の貴族、更には中央への報告も行っていった。

 加えて、事態がこのまま悪化するのを恐れ、最大の戦力を投入する事を決める。

 その為の要請を教会に行っていく。



 治療の為の神官集めとは別に行われた要請。

 それは目的の人物の所に届き、その返事を待つこととなった。

 受け取った者は躊躇う事なく要請を受諾。

 即座に行動に移ると返事をする。

 それを受け取った領主は心の底から安堵した。

 これでこの状況は解決するだろうと。

 その事はすぐさまあちこちに伝えられた。



 その話は瞬く間にひろまっていった。

 城下に、近隣の集落に。

 そして、最前線の市街に。

 それを聞いた者達は、誰もが一様に胸をなで下ろしていった。

 これで救われる、これでこの最悪な状態が終わると。

 まだ解決されてるわけでもないのに、既に事が終わったかのように受け取っていた。

 それも当然だろう。

 彼等が受け取った報せは、そう考えさせるに充分な内容だったのだから。



 ────勇者、立つ



 それが領主が要請した事だった。

 この地方にいる勇者への出動要請。

 それが受諾されたのだ。

 それらは増援と共に到着する予定であるという。



「やったぞ!」

「これであいつらもおしまいだ」

「勇者と聖女万歳!」

 そんな声があちこちから上がっていく。

 それ程彼等は勇者と聖女という存在を信じていた。

 そうなるだけの実績があるからだ。

 今回もそれは同じだろうと、誰もが考えていた。

 何の根拠もなく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


_____________________

 ファンティアへのリンクはこちら↓


【よぎそーとのネグラ 】
https://fantia.jp/posts/2691457


 投げ銭・チップを弾んでくれるとありがたい。
登録が必要なので、手間だとは思うが。

これまでの活動へ。
これからの執筆のために。

お話も少しだけ置いてある。
手にとってもらえるとありがたい。


_____________________



+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ