144回 市街攻略 3
軍勢が市街に到着したのは、真夜中だった。
月が出てるので真っ暗というわけではない。
おかげで歩くのが幾分楽ではある。
なのだが、姿を見られる可能性も高めてしまう。
これが吉と出るか凶と出るかはまだ分からない。
だが、進軍する者達にとっては、とりあえずはありがたいものだった。
苦労せずに進めるのは、それだけストレスが少なくて済む。
進軍する第一波300人は、予定通りに最も攻略しやすい場所へと向かう。
可能な限り静かに、足音を出来るだけおさえて。
なのだが、これだけの人数が動けばそうもいかない。
ある程度離れてるならまだしも、近づけばそこに何かがいるのが分かってしまう。
迫る軍勢は予想通り警備していた兵に見つかってしまう。
「敵襲!」
その叫び声が市街内に響き渡っていく。
接近を察知された第一波はそのまま攻略を開始する。
用意していた大きな梯子を守るように進み、市街を守る堀と壁を超えようとする。
だが、敵も必死である。
灯りの魔法で魔族の姿を照らし、弓矢などで攻撃を開始する。
そのほとんどはゴブリン達がかざした盾で防がれる。
それでも構わず彼等は、手にした武器で攻撃を続ける。
少しでも数を減らす為に。
それから遅れること暫く。
別方面から進む第二波150人が市街への攻撃を開始した。
二つの方面から仕掛けられた彼等は、少ない兵力を更に分散させる事になる。
しかし放置するわけにもいかない。
仕方なく新たにあらわれた敵の方への対処も始めていく。
だが、彼等もそれを防ぎきれるとは思ってない。
出来るだけ数は減らしたいが、それ以上は求めてない。
どうせ防ぎきる事は出来ない。
だから内部への侵入はあえて受け入れる事にしていた。
本番はそこからになる。
彼等の考えは、市街内でのゲリラ戦である。
建物を壁とした迷路に敵を引きずり込む。
そこで少しでも多くの敵を倒す。
犠牲も多くなるだろうが、真正面からぶつかるよりは良い。
狭い場所に引き込めば、少しは有利に戦えるのだから。
なので、抵抗もほどほどに。
少しは敵を削れればそれで良い。
倒せなくても負傷者を出せれば良い。
戦闘可能な人数がその分だけ減る。
傷は治されるだろうが、それはそれで構わない。
魔術にしろ奇跡にしろ、その分だけ術者に負担をかける事になる。
相手の手数が減る。
むしろ、最初の段階でそういった術を使ってくれる方がありがたい。
城壁における防御戦闘はその為のものだった。
そんな市街内の者達に第三波が襲いかかる。
それに気付く者はいない。
数少ない兵はほぼ全て敵襲への対処に追われている。
巡回で警備する者もいるにはいたが、それらも大多数が防衛に回っていた。
数少ない巡回警備は第三波が迫る場所に到達してない。
そんな隙を突いて、魔族が襲いかかっていく。




