143回 市街攻略 2
内部の様子を調べてから仲間の所に戻る。
その情報を元に作戦を考えていく。
居合わせた者達はどうやって攻略しようか考えていく。
さすがに名案は出てこない。
しかし、居合わせた誰もが最善を求めていく。
その姿勢がユキヒコには好ましかった。
出来上がった作戦はそれほど凝ったものではなかった。
陽動として大部隊がいくつかの方面から攻める。
その間に、少数の精鋭部隊が別方面から内部に潜入する。
それだけだった。
ただ、中に残ってる兵力は少なく、あちこちに兵を展開出来ない。
そこを突く形にはなっている。
上手くいけば、それほど損害は出ないはずである。
それでも幾らかの損害は覚悟せねばならない。
それはしょうがないと割り切るしかなかった。
作戦は即座に決行されていく。
必要な道具を揃え、市街へと向かう。
途中で陽動部隊と潜入部隊とで分かれていく。
そのほとんどが陽動部隊だった。
相手を引きつけるために、出来るだけ派手に行動をせねばならない。
その為、陽動部隊は全体の8割から9割にもなっている。
これくらいでなければ相手を引きつける事は出来ない。
また、こちらが本気で攻撃を仕掛けてくると思わせねばならない。
それを考えると、どうしても人数は多くせねばならない。
ただし、そのほとんどはゴブリンである。
どれほど派手に活動しようとも、本気で敵を倒すわけではない。
大勢だと思わせればそれで良いのだ。
また、攻め落とす必要もないので、さほど能力も必要無い。
そんなわけで、こちらはゴブリンが多目になっている。
対して潜入部隊は能力の高い者達が揃っている。
鬼人、獣人、イビルエルフ。
これらの種族だけで固められている。
人数も少なく、全部で50人を超えるくらいだ。
だが、潜入ならばこの程度で充分だと考えられていた。
市街の兵力はこれよりは多いが、一度にその全員がやってくるわけではないのだから。
しかし、それでも油断は出来ない。
地の利は相手にある。
内部に侵入する事が出来ても、制圧出来るかは分からない。
ユキヒコが持ち帰った内部構造の情報はあっても、実際にそこを目にしたわけではない。
常日頃からそこで生活してる者達と違う。
そこで大きな差が出てくる。
ただ、潜入部隊の目的は、敵の壊滅ではない。
城門を開く事である。
それが今回の作戦における制圧の意味するところだった。
潜入部隊だけで全てをこなす必要は無い。
夜陰に乗じて移動する彼等は、そんな役目を胸に抱いて攻略目標へと向かう。
結果がどうなるかはまだ分からない。
だが、成功で終わらせようとしていた。
その為にするべき役目を全うしようとも。
それが士気の高さになり、彼等を前へと進ませていった。




