142回 市街攻略
捕らえられた者達の処置が終わっていく。
女は連行して聖女に。
男は手足と片目を潰して追放。
それからユキヒコ達は市街へと向かった。
最後の仕上げとして。
これまでの町や村よりもしっかりとした防備のなされた市街。
攻め込むのは難しいものがある。
敵も大きく兵力を減らしてるとはいえだ。
固い防備は人数差を補ってしまう。
それでも現在の兵力差ならば勝つ事は出来る。
魔族の兵力は500を上回る。
対して市街に残る兵力は少ない。
100にも満たないだろう。
これだけの差があれば、攻略は可能だ。
だが、その中身が問題である。
数の上でもっとも多いゴブリンの能力の低さ。
そこがどうしても懸念材料になってしまう。
また、城壁や堀を越える手段。
これが無ければどうしようもない。
最前線近くの市街なので、さすがにこれらは堅牢に作られている。
攻略するのはかなり手間がかかりそうだった。
(侵入は難しくはないんだけどなあ)
能力を使って内部に入ったユキヒコは、そう思いながら場内を歩いてまわる。
門番をはじめ、内部にいた者達の精神を操作しての事だ。
ユキヒコの事を味方と思って簡単に内部に入れてくれた。
また、仲間と思ってるので誰何される事もない。
そんなわけで内情を調べるのは簡単だった。
そうやって見てまわって思うが、攻めるのはやはり難しい。
城壁と堀を越えるのがとにかく手間だ。
攻城用の櫓などを用意しようかと考えていたが、それだけでは足りない気がした。
そもそも、用意するのに時間がかかる。
その間に敵の増援が来たら面倒だ。
(いっそ、無視してもいいんだけど)
それも考えてはいた。
無理して落とす必要は無い。
輸送を断ち切れば、いずれ干上がる。
それまで放置しても良いのだ。
その場合、背後を襲われる可能性が出てしまう。
しかし、相手の兵力を考えれば、それもさして問題ではない。
それでも攻略を考えてるのは、今後の考えての事だった。
この先、城塞の攻略も必要になってくるだろう。
そうなった時の為に練習がてらこの市街を攻略しておきたかった。
経験があればそれを活かす事が出来る。
危険ではあるが、今のうちにやっておきたかった。
まださして相手が強力でもないうちに。
それも、ユキヒコの能力を使わずに。
ユキヒコの能力はそれなりに強力だ。
今、こうして市街に入る事が出来るくらいに。
この能力を使えば、軍勢を簡単に中に入れる事も出来る。
だが、それはなるべく避けたかった。
ユキヒコがいない場合、何も出来なくなるからだ。
それでは困る。
出来るだけ自分達で解決出来るようになってもらいたかった。
ユキヒコがいなくても事を進められるように。
そうでなくてはこの先やっていけないだろう。
更に奥地へと進軍していくのだから。
(とはいえ)
だとして、ここの攻略をどうするか。
それが問題だった。
魔族が自分達で解決出来るようになってもらいたい。
しかし時間をかけるのも問題だ。
(何とかしたいけど)
どうしたら良いのか分からない。
なかなか良い案は浮かんでこない。
城壁の片隅に腰を下ろして考える。
中と外を隔てるこの壁をどうやって越えようかと。




