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139回 分け隔て無く聖女になれるように

「女は運び込んだか?」

「ええ、終わってますよ。

 順番を待ってる奴らも中に入れました」

「そうか」

 それを聞いて邪神官は息を吐いた。

 思っていたよりも気を張っていたようで、肩の力が大きく抜けていく。

「助かったな。

 届くのが遅かったら騒動になっていた」

「皆、鬱憤が溜まってますからね」

「戦いだから仕方ないが…………それにしてもギリギリだったな」

 そう言って邪神官は聖女の館の方に目を向ける。

「交代でどんどんやらせていけ。

 順番待ちで喧嘩にでもなったら事だ」

「分かってます。

 なるべく回転を早くさせるようにつとめます」

 そう言ってイビルエルフは頭を動かしていく。

 どの程度で交代させるのか、どうしたら交代を円滑に行えるのか。

 今はそれが大事だった。

「ただ、言って聞くほど分別が良くなってるとも思えません」

「そうだろうなあ」

 邪神官もため息を吐く。

 そう簡単に言うことを聞くようなら苦労は無い。



 運び込まれた女達から衣服を剥ぎ取り拘束具に嵌め込む。

 舌を噛まないよう猿轡もして、身動きは完全にとれなくした。

 聖女の館の中でそうした措置が終わるまで暫くの時間が必要だった。

 それから兵士達を呼んで中に入れた。

 くぐもった悲鳴や荒い鼻息は、程なく中から漏れてくるようになった。



 それが連行された女達の仕事であった。

 男達の相手をする。

 卑猥な意味で。

 その為の施設が聖女の館であった。



 勇者に寄り添う存在。

 勇者と共にある者。

 女神イエルの信徒達にとっての憧れ。

 そんな存在にあやかった名称だった。



「しかし、何度見てもとぼけた名前だ」

「まったくですね」

 邪神官とイビルエルフは苦笑してしまう。

 彼等にとって最悪の敵である勇者と聖女。

 それにあやかってつけられた名前。

 それがまた何とも皮肉というか嫌みというか

 なかなかに痛烈なものだと思わせていく。



 それは、兵士を勇者に見立てて。

 相手をする女を聖女に見立ててのものだった。

 確かに戦場に出て戦うには勇気が必要だ。

 そういった者は勇者と呼んでも良いだろう。

 また、そんな男の相手をするのだ。

 そのような者は聖女と呼ぶにふさわしかろう。

 実態はともかくとして、それはそれで敵にいる者達と通じ合うものがある気がした。



 違いがあるとすれば、神に選ばれてるかどうかだろう。

 当然ながら、女神イエルに選ばれた者はここにはいない。

 また、魔族の神々に選ばれてるというわけではない。

 さすがにそういった存在ではなかった。

 それでも、戦場に赴く者達は確かに勇気がある。

 その相手をするのであるならば、聖女と呼んで差し支えないだろう。

 また、選ばれてないにしても、神々の為に戦ってるわけでもあるから勇者でも間違いはない。

 選ばれてないにしても、結果として勇者を助け、引いては神々に貢献してるから聖女でも良いだろう。



「我らの神々の勇者と聖女か」

 そう言ったのはユキヒコである。

 選ばれたわけではないにしても、果たしてる役目は似てる。

 ならば、そう呼んでも良いだろうと。



 また、勇者はともかく、聖女は自発的になれるものではない。

 他の誰かに選ばれてなるものだ。

 だったら、それが女神であろうがユキヒコ達であろうが大きな差ではない。

 選ばれた以上、やるべき事をやってもらおうとも言っていた。

 それはそれで酷い事とは思うが、邪神官達は特に反対はしなかった。

 彼等に損害があるわけではないのだから。



 それよりも、彼等の勇者への労いが必要だった。

 それが出来るなら問題は無い。

 もとより敵だった者達である。

 それらに投げかける憐憫など持ち合わせてはいない。

 魔女に従う者達は、彼等の生活圏をおびやかす侵略者なのだから。

 それらを全うに扱うなど偽善でしかない。

 そして偽善は悪でしかない。

 悪は滅びに向かう道である。

 そんなものを認めるような愚かさを邪神官達は持ち合わせていなかった。



「何にせよ、上手くいけばいいが」

「そうですね」

 聖女として勇者を慰めてもらいたい。

 また、もう一つ求めてる事もこなしてもらいたい。

 どちらも今後に関わる事だから。

「では、こちらの方は任せるぞ」

「分かりました」

 そう言って邪神官は仕事に戻る。

 イビルエルフは、順番をまってる勇者達の整理に向かった。

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