134回 安全策をとっても、どのみち襲撃される事になっている
「そろそろ来るぞ」
側にいるゴブリン達に指示を出していく。
それを聞いた伝令役が潜んでる者達に指示を伝えにいく。
街道沿いに展開するゴブリン達がそれを聞いて備えていく。
鬼人、獣人、イビルエルフも同様に。
手順は既に決まっている。
あとはそれが上手く決まるよう願うだけだ。
敵の動きは既に筒抜けだった。
何せ、領主のいる所にユキヒコが潜入してたのだから。
居合わせた全員の意識を操作し、ユキヒコへの認識を狂わされた為である。
門番を狂わせて内部に入り、領主の館にも問題無く入れた。
そして重要と思われる人物から必要な情報を聞き出し、彼等の会議にも忍び込んだ。
その場にユキヒコがいる事も気づかなかった彼等は、重要な決定の全て口にしていった。
なので待ち伏せする事は簡単だった。
あとは実行の際にどうなるかである。
こればかりはやってみるまで分からない事だった。
事前にどれだけ準備をしてもだ。
幸い敵の配置などはある程度分かっている。
どこをどう狙えば良いのかも把握している。
事前に出来る手は全て打ってある。
不安が解消されたわけではないが、成功する可能性はかなり高くなっている。
余程の不運が舞い込まない限り、おそらくどうにかなるはずだった。
その為に兵力もある程度回してもらっている。
市街の包囲と細々とした作業に500。
残り800が襲撃に投入される。
それでも敵の方が人数が多い。
ほとんどが民間人であったとしても、抵抗されたら手間取る。
そうならないように、序盤で優位を確保せねばならない。
それが出来るかどうかが悩ましいところだった。
(どうにかなるだろうけど)
勝算はある。
可能な限り道具は揃えた。
短時間ではあるが、それらの扱いについての訓練も出来た。
また、今回はゴブリンだけというわけではない。
他の種族も戦闘に加わっている。
これらが上手く動けば勝利を得る事は難しくはない。
ただ、勝つだけではどうしようもない。
どれだけ損害をおさえる事が出来るか。
そこが問題だった。
今後を考えると、どうしても損害は少なくしたい。
死傷者が出るのはやむを得ない事ではあるが。
(どうにかなればいいけど)
悩みながら敵が来るのを待つ。
引き下がるわけにはいかないのだ。
やるだけやるしかない。




