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133回 市街はここまで追い込まれています 6

 慌ただしく準備がととのい、住民達が市街から出ていこうとする。

 その際に当面のまかないとして食料などが配布された。

 備蓄を削る事になるが、まさか手ぶらで放り出すわけにもいかない。

 さすがに全部は吐き出せなかったが、三日は保つだけの量が与えられた。

 隣の領地まで歩いても一日とかからない。

 足の遅い難民であっても、二日か三日もあれば到着する。

 それを見越してだ。

 途中で襲撃にあえばこの限りではないが。

 それでも食料の心配がないだけでも、ある程度気持ちをおさえる事は出来た。



 出発の日。

 慌ただしく町から出て行く者達は、後ろを時折振り向きつつ先へ進んでいった。

 誰も明るい展望など抱いてはいない。

 迫る敵の陰に怯え、住み慣れた町を脱出するのだ。

 住み慣れた場所を離れる不安しかない。

 おまけに、先々への展望すらないのだ。

 難民としてこの先何があるのかと考えると気が滅入ってしまう



 そんな一行の中で、フユキとその兄は馬車に乗っていた。

 さすがに歩いていくわけにもいかないし身分もある。

 他と一緒というわけにはいかない。

 単に権威の問題だけではない。

 隣の領地についた時に、それと一目でわかるようにしておく為でもある。

 身分の証は他にもあるが、なるべくなら数は多い方が良い。

 それに、最悪の場合二人だけでも隣の領地につけるように、という意味もある。

 速度で有利な馬車ならば、襲撃の中を突破する可能性もあった。

 その為、周囲には騎兵が同行している。

 馬車に合わせて移動出来るようにする為だ。

 それらは数少ないながらも西柴領の兵と、選抜された義勇兵がいる。

 兵は最悪の場合でも逃げ無い忠誠心を見込んで配備された。

 また、これもまた隣の領地で身分を示すための道具でもある。

 そして義勇兵も武家や貴族出身者で固められていた。

 そういった身分でもなければ戦闘用の馬術を身につけてないからだ。

 縁故による忠誠を期待してのものでもある。

 それでも何かあった場合どう動くかは分からないが。



 そんな一行は大きく分けて二つに分かれていた。

 先に進む市街の民達。

 フユキ達はこの中に入っている。

 そして、その後ろに大きく離れて難民達が続いている。

 これは移動速度が極端に違うからだ。

 難民に合わせていたら、全体の速度が遅くなる。

 そうなった場合、生き残る可能性は低くなってしまう。

 なので二つの集団は別れて行動する事になった。

 非情ではあるが、全滅するよりは良い。

 襲われて全員が壊滅するよりはよっぽど良い。

 置いていかれる方はたまったものではないが。



 だが、さすがに気が咎めたのか、何人かの市街民と義勇兵は難民に同行した。

 難民達がもたらした問題については色々言いたい事はある。

 しかし、それも彼等に原因があるわけではない。

 魔族が襲って来た結果であり、それを考えれば難民達は犠牲者でしかないのだ。

 そう思った者達が難民達との同行、そして道中の護衛を買って出た。

 そんな者達に、難民達からは感謝の念があがってきた。



 もっとも、全てが善意による行動というわけではない。

 中にはある種の深読みから難民に同行した者もいる。

 そのほとんどが、難民達から魔族の行動を聞いていた者だ。

 村や町を襲った魔族が、女と物資を強奪したこと。

 そして男と老人を、腱を切るという暴虐を施しはしたが、最終的に生きて逃がしてること。

 そこから考えたのだ。

 魔族が狙ってるのはまともに動ける者ではないのかと。

 ならば、難民達に襲いかかるような事はせず、まともに動いてる連中をを狙うのではないかと。

 そう考えて難民に同行した者もいた。

 一か八かの博打であるが。

 幸か不幸か、その読みは当たる事になる。

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