表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/428

129回 市街はここまで追い込まれています 2

(だが……)

 それでも、と領主は思う。

 もし叶うならば、国も領民も同時に守れる方法が欲しいところでもある。

 それが思いつくならばその方法を実行している。

 しかし、打開策が思いつかない以上どうしようもない。

 より悲惨な状況に陥るか、現状の悲劇を続けるか。

 今のところ、選択肢はこれだけである。

(せめて領民を逃がす事が出来れば良いのだが)

 この地域が危険なのは既に分かっている。

 せめて隣の領域まで逃げる事が出来れば、まだもう少し問題は緩和出来たかもしれない。

 しかし、伝令は帰ってこない、商人などもやってこない。

 周囲を敵が包囲してるからだろう。

 それらを突破すればどうにかなるかもしれないのだが。

(大量のゴブリンか)

 阻んでる要因を思い浮かべて嘆息する。



 襲われたという商人からその話を聞いて、領主は絶望的な思いにとらわれた。

 領主と共に話を聞いた主立った者達もだ。

 正確な数は分からないが、数十とも100を超えるとも言うゴブリン共。

 それらに襲われ全てを奪われたという商人の証言は実に重い。

 彼の損失や負傷もそうだが、それが示す事実はより大きい。

 それだけの大軍が潜んでるならば、突破して逃亡するのも難しいだろう。

 数千の領民を守って移動するのは、現有兵力では不可能だ。

 民衆にも武装して戦闘に参加してもらうにしてもだ。

 その足枷になってるのが難民である。

 正確に言うならば、難民が追ってる傷だ。



 難民達を非難するわけではない。

 彼等も領民であり、敵に襲われた被害者だ。

 同情もするし、どうにかしたいとも思う。

 だが、それで状態が変わるわけではない。

 手足の腱が切られてまともに動く事が出来なくなってる彼等は、どうしても行軍のお荷物になってしまう。

 一緒に行動するなら、歩みがそれだけ遅くなる。

 ここから脱出する際には、それが問題になってしまう。

 膨大な人数、少ない護衛。

 そして、移動を阻む負傷者。

 これらが隣の領主の所への移動を難しくさせていた。



 一応、負傷者への手当は出来ないものかと考えはした。

 治療の魔術を使える者、教会の神官による奇跡の行使。

 これらを打診はしてみた。

 しかし、答えは芳しくない。



 傷は魔術による治療では回復出来ない程深いものだった。

 少なくともこの領地にいる魔術師の腕では不可能である。

 回復させるには、もっと強力な魔術師の力が必要だった。

 そしてこれが可能な程の魔術師は数が少なく、呼び寄せるのも難しい。

 それほどの腕があるなら、相応の地位や立場についてる者が大半だからだ。

 そうでないにしても、多額の謝礼が必要になる。

 如何に領主と言えども、そこまでの権限はないし、千人単位の治療を頼めるほどの金はない。



 神の奇跡も同様で、治療は可能だがそれが可能な程の奇跡を授かってる者がいない。

 いたとしても、それは教会でも上位に入る者達でなければ不可能である。

 もっと大きな町の教会を任されるような神官か、危険な地域に出向かなければならない伝道者でもなければ。

 あるいは勇者や聖女でなければ、これほどの深傷を治すことは出来ない。

 それ程に傷の深さは深刻だった。



 この為、傷を負ってる難民の移動は困難を極める。

 完全に動けないわけではないが、片手片足のみ無事という状態では移動速度がどうしても落ちる。

 では、荷車や馬車を用意したらとも考えるが、現在保有してる数ではとても足りない。

 また、市街の者達の難民への感情の問題もある。

 やむなき事とは分かってるが、難民が起こした問題の為に市街の者達は敵対心を抱いてる。

 この憎悪がある限り、難民を助けて隣の領地に向かう事はないだろう。

 さすがにこれは領主ではどうにか出来るような事ではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


_____________________

 ファンティアへのリンクはこちら↓


【よぎそーとのネグラ 】
https://fantia.jp/posts/2691457


 投げ銭・チップを弾んでくれるとありがたい。
登録が必要なので、手間だとは思うが。

これまでの活動へ。
これからの執筆のために。

お話も少しだけ置いてある。
手にとってもらえるとありがたい。


_____________________



+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ