123回 まずは敵を混乱させねばならない
「それじゃ、やろうか」
誰もが寝静まった夜。
そう言ってユキヒコは周りにいる者達に指示を出す。
それに従い、第一陣が駆けだした。
一緒にやってきた数人の獣人である。
その身軽さをもって彼等は村に入り込み、内部から門を開ける。
これにより鬼人やゴブリンの侵入を容易にする。
今まではやりたくてもなかなか出来ない事だった。
そうする間にも次の者が村の入り口へと向かう。
体格に優れる鬼人を前にして、ゴブリンが続く。
少し遅れる形で魔術援護をするイビルエルフがついていく。
出来るだけ足音をたてないようにしながら。
だが、さすがに人数が多いのである程度の音は出てしまう。
こればかりはやむをえないので、ある程度は諦めるしかない。
それでも人数の割には静かに移動をしていく。
そうやって内部に入るのが総勢100人ほど。
残りは村の周囲を固めて逃亡者が出ないようにする。
どちらかというとこの包囲の方が重要だった。
外に人が逃げて襲撃が悟られるのはまずい。
そうさせない為にも、一人残らず捕らえねばならない。
その為に包囲に人数を割いていた。
制圧だけなら、内部に突入する者達だけで充分なのだから。
実際、手際はかなり良くなっていた。
鬼人達は各家の扉を難なく破壊して、内部への侵入を簡単にしてくれる。
それで起きてきた住人にはイビルエルフが眠りの魔術を使う。
抵抗力が無くなったところで、ゴブリンが縛り上げていく。
こうした手順で作業を行っていき、損害らしい損害も出ずに村を制圧する事が出来た。
時間もそんなにかからずに終わる。
あとは腱を切る措置をして完了だった。
そこからは楽しい略奪である。
「終わったぞ」
作業完了の報告にやってくるグゴガ・ルにより、今夜の作業が終わった事を確認する。
「お疲れさん。
とりあえず村に入って休もう。
村の連中をしっかり拘束してからな」
「もうやってある」
「さすがだな。
それじゃあ、見張りをつけておいてくれ。
あとは好きにさせてやってくれ」
「分かった」
頷いたグゴガ・ルは指示を伝えに仲間の所に戻っていく。
それを見てユキヒコも村の中に入っていった。




