115回 彼等の現在値、能力表記で見えるもの
ユキヒコが見るところ、ゴブリンの能力は大分上がってきている。
ずば抜けてという事は無いが、それでも思ったほど低いわけではない。
これはユキヒコと共に行動してる者達とそれ以外での差である程度分かってきている。
また、捕らえていた人間達や義勇兵などと比べても差は縮まっている。
例えば人間の能力。
これは概ね次のようになる。
<人間の能力値>
体力 95~105
反射 95~105
判断 95~105
心意 95~105
ユキヒコが読み取る能力はだいたいこのように表示される。
なお、各項目の意味はだいたい言葉通りである。
体力は力の強さや健康さ。
反射は敏捷性や器用さ。
判断は理解力や解析力。
心意は気持ちの強さや共感性。
そういった意味であるようだった。
これに対してゴブリンは概ね次ようになっていた。
<ゴブリンの能力値>
体力 50~55
反射 50~55
判断 50~55
心意 50~55
人間の子供と同程度と言われる通りであった。
人間のおおよそ半分くらい。
実際、町や村にいた子供と同程度の能力値である。
本当に優れたところがない。
これでは簡単に蹴散らされるのも当然であろう。
しかし、そんな彼等も成長はするようだ。
ユキヒコと共に行動してた者達にそれが見てとれる。
彼等の能力はだいたい次の範囲になっていた。
<歴戦のゴブリン達の能力値>
体力 65~70
反射 65~70
判断 65~70
心意 65~70
人間の成人に比べればまだ低いだろう。
しかし、他のゴブリン達に比べればかなり高い。
その差は様々な行動の中に表れている。
実際、戦闘における手際などを見ると、この違いがよく分かる。
同じ作業をさせてもかかる時間や必要な人数に差が出てくる。
仕上げの丁寧さもだ。
能力値を見ればこれらの差があるのも頷ける。
それだけの違いがあるのだから。
また、持って生まれた特徴にも違いが出てきている。
これは能力だけではない個人差や種族の特性などを表してるようである。
これにより様々な違いが出て来るようだった。
ゴブリン達には基本的に次のような特徴が備わっていた。
まずは『小心者』
意気地がない、度胸がない。
切羽詰まっても逃げ出す事しか考えない。
追い詰められて初めて立ち向かう事を考える。
その場合でも自分が有利でなければ行動しようとしない。
また、敵を倒す事が出来るならば決して容赦はしない。
反撃を恐れるが故に確実に止めをさす。
そして『貪欲』
自分の無能や非力を自覚の有無を問わず理解してしまっている。
その為に数少ない獲物の獲得の機会を決して逃しはしない。
それが一欠片の肉片であっても、手に入れる為ならどんな非道な事も実行する。
これらがゴブリンとしての種族の特徴だった。
決して褒められたものではないだろう。
だが、これがあるからこそ能力で劣るゴブリンが、種族として生き残ってこれたのだろうとも思えた。
小心者であるから大それた事は出来ない。
やるならば人数をたのむなり、確実に倒せるくらいの弱者しか相手にしない。
不利と分かれば逃げの一手に入り、確実に生き延びる事を考える。
これは弱者が脅威から生き残る為の手段ではあるだろう。
また、貪欲であるからこそ、数少ない機会を決して見逃しはしない。
一か八かの勝負になったとしても、それが絶好の機会なら躊躇わずに飛び込む。
小心さと裏腹に見える度胸も、こういう特徴があるなら納得も出来よう。
意地汚さや見苦しさとも言える。
潔さとはほど遠いだろう。
だが、生存して命を繋ぐ為なら何も躊躇わないのは、ある意味強いと言える。
善し悪しはともかくとして。
なのだが、ユキヒコと共にいるゴブリン達はここが違う。
こういった特徴が無い者が何人かいる。
その為、能力的には他と違いがなくても、ゴブリンらしくない行動をとる者がいる。
また、それを備えていても、別の特徴によって補ってる者もいた。
これが持って生まれたものなのか、はたまた生きていく中で新たに芽生えてきたのか。
それは分からない。
しかし、他とは違う何かを持ってる者達が結構目についた。
『小心者』ではなく『慎重』を持つ者。
『貪欲』ではなく『粘り強さ』を持つ者。
似てるようで根本的に違うものを持ってる者が何人かいる。
他にも様々な特徴を備えた者が目についた。
それらが持って生まれたものなのか、後天的に手に入れたのかは分からない。
分かってる事は、ここにいるゴブリン達は他よりも確実に優れてるということ。
それは戦力としてはっきりと表れてくる。
数の上では主力であるゴブリンの能力が高いのだ。
全体の戦力に反映されるのは当然である。
メッセージにての感想ありがとう。
もらえるとやっぱりありがたい。




