114回 手を出せる所から 5
最終的にユキヒコの策は受け入れられた。
他にもっと良い方法があれば良いが、それを思いつくものはいなかった。
留まっても現状の維持は難しい。
かといって後退するのは避けたい。
となれば、あとは前に進むしかない。
そうする為の方法は、ユキヒコが提示した方法が最も無難に思えた。
やる事が決定してからの動きは早かった。
邪神官は後方の司令部に、制圧した地域の占領を訴えた。
これについてはさほど問題無く承認されるだろうと思われた。
前進は誰もが望むものだ。
しかも敵勢力が既に排除された地域である。
正確に言えば市街がまだ残ってるが、それ以外の広い地域は完全に無人地帯になっている。
そこに兵力を移動させればいいだけなのだ。
こんなに美味い話はない。
遠からず味方の軍勢がやってくるだろうと思われた。
それに備えて、邪神官達にはこの地域で留守番をする事となった。
到着するだろう増援の案内が必要になる。
また、敵の市街を包囲して警戒もしてないといけない。
伝令や輸送なども遮る必要がある。
このためにそれなりの兵力を残さねばならなかった。
加えて、彼等には他にもしてもらいたい仕事があった。
道の開通である。
町や村を結ぶ道路はあるが、それを利用するのは今は避けたかった。
どこに誰が潜んでるのか分からないからだ。
なので、既にある道とは別の通路が欲しかった。
情報の伝達や物資の輸送をするための。
草木を取り除き移動しやすいようにしてくれるだけで構わない。
それもこの場に残る者達に頼みたかった。
このため、残る部隊の人数は結構なものになる。
様々な作業をする必要があるからだ。
更に、手に入れたものの管理もある。
なんだかんだで大所帯になってしまう。
こればかりは仕方ない事なので誰も文句は言わなかった。
ただ、人数の調整もあるので部隊を編成しなおさなくてはならない。
これが少々手間であった。
その中で、急いで編成をしなおしたユキヒコ達が出発をしていく。
敵に動きを気取られないように、与える損害を出来るだけ大きくするために。
こちら側に敵を寄せ付けないためにも。
その為には敵地で混乱を引き起こすしかない。
決してこちら側に敵を引き込んではならない。
だから急いで敵地に向かう必要があった。
敵がこちらの動きに気づいてなくてもだ。
そうであるうちに少しでも敵を制圧せねばならない。
どうしても時間との勝負になってしまう。
ただ、今回出撃出来るのは500人。
抽出出来るのはこれが限界だった。
幸い、ゴブリンだけでなく鬼人や獣人、エルフらもいる。
人並み以上の能力を持つこれらがいれば作業は多少ははかどるだろう。
何より、ゴブリンも成長している。
一般的に知られるゴブリンよりも優秀な連中だ。
度重なる戦闘をこなして経験を積んでいる者達ばかりである。
実際、能力もそれなりに伸びていた。
それをユキヒコは開花した能力で把握している。




