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113回 手を出せる所から 4

「敵が取り返すために軍を寄越してきたら、と言う事かな」

「そうだな。

 様々な手段が考えられるが、敵がやってくるという事で変わりはない。

 そうなった場合はどうする。

 こちらとしては、背後を取られる事になりかねないぞ」

「確かにそうですね」

 ユキヒコはイビルエルフが発した疑念を素直に認めた。



「敵が軍勢をもって取り返しにくる事はあり得ます。

 というか、確実にやってくるでしょう。

 一部とはいえ領土を奪われたんだから」

「やはりそう来るか」

「ほぼ確実に。

 それがどの程度の規模で、何時頃やってくるかまでは分からないけど」

 さすがにそこまでユキヒコの智慧では想像出来ない。

 すぐに来るのか、何ヶ月か後になるのか。

 それが義勇兵の寄せ集めで行われるのか、正規軍によって為されるのか。

 これらはその時になってみるまで分からない。

「ただ、来たならそれは俺達ではなく占領してる人達にどうにかしてもらいましょう」

「なに?」

「だって、土地を持ってるのは俺達じゃないんだから。

 それは占領してる人達の仕事でしょう。

 俺達が考える事じゃない」

「それは……そうだが」

 言ってる事はもっともである。

 しかし、あっさりと言うユキヒコにイビルエルフは驚いてしまう。

「だいたい、占領しに来るんだから、それなりの兵力もあるでしょう。

 それが、そう簡単に撃退される程度の人数とは思えないよ。

 それなりの規模の部隊になると思う」

「もちろん、それはそうなるだろう」

「だったら、そう簡単に取り返される事は無いでしょう。

 退路を断たれる心配は、まず無いかと」

 ユキヒコはまず、こういって懸念を少しだけ払拭した。



「仮に味方がそんなに多くなかったり、敵が結構な規模で来たりしたとして。

 それで味方が押されて退散したとしましょう。

 それでもそれなりの抵抗はするだろうし、敵も多少は損害を受けてるでしょうよ。

 俺達でどうにか出来るくらいに減ってるかもしれない」

「まあ、無傷という事は無いだろうな」

「だったら、残った敵残党を俺達で倒せばいい。

 こっちにも損害は出るだろうけど、無傷の敵を相手にするよりはマシだ」

「じゃあ、お前……味方を盾にするつもりか?」

「結果としてそうなるかな」

 場がざわめいていく。

 敵が来ればそれはそうなるだろうという事は分かる。

 しかし、意図してそれを実行するのと、不慮の事態でそうなるのとでは意味が違う。

「いくら何でもあくどくないか?」

「無料で土地を提供するんだ。

 それくらいの事はしてもらわないと」

 ユキヒコは全くどうじる事無く言ってのける。

「そもそも、最前線の場所なんだから、それくらいは当然だ。

 警戒してない方がおかしい」

「それはそうかもしれんが」

「まあ、そこは俺達が心配する事じゃない」

 ユキヒコ達がやるべきは占領地の防衛ではない。

「ここから更に奥に踏み込んで、敵を潰していかないと」

 ユキヒコが見ているのはそこだった。

 他の誰かに提供する予定の場所ではない。

「それにさ。

 敵地で暴れてるうちは、占領してる所にまで手が回らないだろうさ。

 もし、後ろにいる仲間が気になるなら、前線をひっかき回してやればいい。

 そうする事で敵を引きつける事が出来る」

 そう言って心配する者達をなだめた。



 もちろん、そんな確証はない。

 敵がどう動くかなんて分かるわけがない。

 最近目覚めた能力を使えば把握出来るかもしれないが。

 今はまだそこまで分かるわけではない。

 あくまで相手が出て来た時に、考えや気持ちを読み取れば判明するかもしれないというだけだ。

(この力でどこまで出来るか分からないけど)

 いまだ未知数な部分のある能力だ。

 予想を下回るのか上回るのかも定かではない。

 そんな能力に頼り切りになるわけにはいかなかった。

 だから敵の出方については、予想するしかない。

 その上で最も有効と思える事をしていくしかない。

 だから場所を他の者達に提供する事にした。

 そうやって戦力を無理矢理引きずり出す事にした。

 そして、自分達が行動出来る土台を作る事にした。



「その上で、敵を分断する」

 疑念や懸念を抱いたままの者達に話をしていく。

 これからの事を。

 やろうとしてる事を。

「この辺りは他の者達に任せて、俺達は先に進む。

 そこで混乱を起こして、この地域を孤立させる。

 物資の輸送を断ち切って、飢え死にさせる。

 戦わなくても自滅するように仕向ける」

 それはこれまで繰り返してきた戦法だった。

 情報も物も人も断ち切る。

 そうして相手が干上がるのを待つ。

「残った市街を、これで完全に潰す。

 その為に、無理矢理にでも増援を引きずり出す」

 手段を選んでる場合ではなかった。

 確実に敵を潰す為に出来る事は何でもやっていく。

 そうでもしないと勝利など覚束ない。

「そうすれば自然な形で敵を包囲できる。

 ここに来て駐留する部隊とでな」

 その形に持っていかねばならない。

「干上がった敵を、市街を攻撃する。

 ここを完全にこちら側のものにする」

 それがこの地における最終目標だった。

「……俺が考えてる策は以上だ」

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