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111回 手を出せる所から 2

「どういうつもりだ?」

 部隊を代表するように邪神官が問いかける。

「この場を捨てて隣に進むとは。

 さすがにその余裕もないぞ」

「分かってる」

 それはユキヒコとて理解はしていた。



 現状での兵力では地域を占領する事は出来ない。

 また、守りの強固な市街の攻略も難しい。

 しかし、ここを無視して先に進むのはもっと難しい。

 市街に敵を残したままとなれば、背後を突かれる可能性が出て来る。

 それがなくても、補給路を襲撃される事はありえる。

 今までユキヒコ達がやってきた手段だ。

 敵がしないとは思えない。



「だから味方を引き込む」

 対策として考えてるのがこれだった。

 敵が脅威ならば味方を呼んで対処させる。

 これ以外に手段はない。

「だから増援を頼むようお願いしておいたはずだ」

「たしかに」

 邪神官もそれは聞いていた。

 この先に進むにはもっと多くの兵力が必要になる。

 だから、味方の増援を要請して欲しいと。

 しかしそう簡単に味方が動くわけもない。

 それなりの兵力が動くとなれば、上層部の判断が必要になる。

 そこが簡単に頷くわけもない。

「要請はしてるが、簡単に承認されるわけではないぞ」

 問題の大きさから来る言葉を邪神官は口にする。



「確実な戦果があるならともかく、そうでもないなら難しい」

 当然のことだが、軍事行動は何らかの目的を達成する為である。

 それが敵の殲滅だったり、場所の防衛だったりする。

 これらの重要性や必要性によって軍を動かすかどうかが決まる。

 少なくとも建前ではそうなっている。

 ここに様々な思惑や陰謀などが入ってくるので、必ずこうなるとは言い難い。

 しかし、それでも基本的には侵攻・防衛の必要性がなければ軍は動かない。

 突き詰めていえば、そこには国益が絡んでくる。

 確実に何かを得る為に、あるいは失ってはならないものを守る為に。

 これがあるからこそ戦闘や戦争に踏み切るのだ。



 翻って今回はどうなのか?

 確かに敵地を侵攻している。

 制圧している地域もある。

 しかし、それは小さな範囲でもある。

 現代日本で言えば、市町村一つ程度の地域を制圧しただけだ。

 それはそれで大きなものではあるが、戦略として必要なのかと言われれば悩ましい。

 確保しておけばそれなりに利点は出て来るだろう。

 だが、必ず確保しなければならない要地というわけでもない。

 国境で競り合いが始まれば巻き込まれる事のある場所だ。

 帰属先はその都度変わる。

 そんな所を一つ抑えたとこでどれ程の価値があるのか分からない。

 橋頭堡にするにしても、それならもっと有効な場所は他にもある。

 それなのに、この辺りを制圧するために兵力を割く必要があるのか?

 そういう話になっていく。

 だから援軍要請は実現しにくい。

 邪神官としてはそう言うしかない。

 実際、要請はしてはいるが、芳しい返事は来ていない。



「そりゃそうだろうさ」

 ユキヒコもそれは理解している。

「でも、この地域そのものを提供するって言ったらどうなる?」

「どういう事だ?」

「他の部隊にこの辺りをくれてやるんだよ。

 それならやってくる連中もいくらかいるんじゃないのか?」

 その言葉に邪神官達は唖然とした。

 言ってる事のあまりの酷さの為である。

「なんだと!」

「正気か、貴様」

 隊長級が次々に気色ばんで騒いでいく。

 それもそうだろう。

 自分達が苦労して制圧したものを、あっさりと他人に渡すというのだ。

 これを納得するようなものはまずいない。

 それは邪神官にしても、その副官であるイビルエルフにしても同じだ。

「それはさすがに……」

「いくら何でも認められんぞ」

 そう言って難色を示す。

 ただ、他の隊長級に比べて二人は幾らか冷静だった。

 確かに納得しがたい話ではある。

 しかし、ユキヒコが提示してきた策とその結果を考えると否定ばかりもしてられない。

「……何か考えがあるのか?」

 そう思うだけの事をユキヒコは示してきた。

 今回もそうなのかもしれないと考えながら。

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