101回 新たな感覚に戸惑いつつも馴染んでいこうとする 2
頭の中に情報が続々と入ってくる。
ユキヒコに何が出来て、どれ程の効果があるのか。
それが判明していく。
遠視、透視、聞き取り、震動感知、安全・危険察知、伝心などなど。
実際に見聞きする五感を超えた能力の数々が頭に浮かんで来る。
全てユキヒコに出来る事として認識されている。
(嘘だろ?)
そう思うも、否定出来ない実感がある。
思い浮かんできた全てを実行出来るという確信がだ。
そもそも、こうして自分に出来る事を検出したのも、新たな能力によるものだ。
言うなれば察知や把握能力の拡大と言うべきだろうか。
そういう意味では五感の強化の延長とも言える。
他のものを動かすというのではなく、そこにあるものを認識する、識別する力になる。
この能力が出て来たからこそ、周囲の様子を瞬時に受信する事が出来た。
自分の持ってる能力も判明していった。
既に備わってるものを読み取るという形で。
更に言うならば、ユカリとの戦闘でもこの能力は発揮されていた。
その時点でもう使えるようになっていたのだ。
だからユカリの動きなどを事前に察知する事が出来ていた。
単純に気の流れだけを読み取っていたのではない。
その事に今になって気づいた。
総じて言えば受動的な能力である。
こちらから何かを動かすのではなく、既にあるものを見聞きするようなものなのだから。
しかし得られる情報は大きく、周辺の事を容易く把握する事が出来る。
遮るものがあってもこれは変わらない。
物陰に潜んでいようと、その姿を透視して発見する事など容易く出来る。
それどころか、相手の思考や気持ちを読み取る事すら出来る。
これの応用で、遠く離れた相手と通信する事も出来る。
加えて、相手の状態などを解析する事も出来た。
(本当か?)
そう思って試しに力を使ってみた。
連れ出された女義勇兵達の位置をとりあえず探してみる。
意識をそこに合わせ、必要な情報だけが手に入るようにした。
そうしたら、町の建物の一つに放り込まれてるのが分かった。
ついでにその場所を透視したら、縛り上げられて転がされてる者達の姿が見えた。
更にその者達の事も調べていく。
声も聞こうと思ったが、猿轡されてるのでそれは出来なかった。
だが、喉から出て来るうめき声は伝わってきた。
(凄えな)
能力の凄さがよく分かる。
ついでに、転がってる義勇兵達についても調べてみる事にした。
先ほど自分の能力を把握した時のように、相手の能力も分かるのかと思ってだ。
恐ろしい事にこれもしっかりと判明した。
名前に年齢、身長に体重。
出身やこれまでの経歴。
様々な能力や技術も数値などで示されていく。
これにはユキヒコも驚いた。
(こんなものまで分かるのか)
身体能力や知的能力、心的態度や傾向などなど。
様々なものが数値化されている。
そして、それらが何を示すのかも分かってしまう。
説明などが為されてないにも関わらず。
(凄いな、これ)
まるでゲームのようだと思った。
そう思っておかしな事だと思う。
(ゲームってなんだっけ?)
それが何であるかを何となく理解は出来る。
なのに、どういうものだったのかが分からない。
記憶は無いはずなのだが、どこかでそれをおぼえてる。
何とも言えない感覚に襲われる。
(なんだこれ?)
訳が分からなかった。
結局、ゲームというものが何なのかは分からなかった。
新たな能力を持ってしても、浮かんできたその言葉が意味するものは判明しない。
それでも今後の活動や行動に問題が発生する事は無い。
直接の関わりはないのだから。
しかし、知っていても意味が分からないというのは違和感を抱いてしまう。
それが気に障るというか気になって集中力は多少落ちてしまいそうだった。
支障が出るほどではないけども。
(そのうち何か分かるだろう)
今はそう思って放置する事にした。
それよりも、新たに得た能力の使い方や使い道を把握する方が先である。
次の行動を支持しながらも、ユキヒコは新たな能力を使って様々な事を調べていった。




