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夫婦で異世界にやってまいりました。(仮)  作者: ゆゆ
妻は元の世界に戻ってきました。
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02


なるほど。

私は心のなかで頷いた。

あの後紹介されたパーティメンバーは三人。


ヒーラーのアマシェ・ルルエイ。

ハンターのカタリナ・エルダー。

シーフのソル・ミルダ。

全員幼友達で、一緒に旅立ちしてきたようだ。全員家名がついてあることから、貴族であり、将来王宮に携わることがほぼ約束されている。ヒーラー、と呼んでしまったが所謂治癒師は魔術師の中でも一握りの存在で、本来なら学校を卒業したらすぐ王宮に迎えられただろう。

そうしなかったのはきっと、ライの存在だ。チートを持ち、容姿端麗。性格は抜けているところがあるが温厚。そんなところになぁんにも持っていない顔だけの女が出たらどうなるか。

あれだけ転生をしたいと言っていたのに想像もつかないのか。


「一体、どうやって取り入ったのか」


パーティに入って毎日言われている言葉である。

アマシェはライのことが好きで、カタリナはそれを応援している。ソルは男だけど、異物が入ってきてからパーティの雰囲気が変わり、それが面倒くさそうだ。つまり、ライだけが能天気に私にすり寄ってくる。


そんな、冷ややかなパーティ内で情報が手にはいるわけもなく、町を移動する度に、クエストに出かける4人を見送ってぼそぼそと町で情報を集めていく。見た目は変身スクロールで絡まれづらくし、パーティが帰ってきそうな時間にはちゃんと指定された場所で待つ。そうやって凌いできた。


今、王宮にいて政治をとりなしているのは、オリンピアという王女。先の戦いで共に戦った勇敢な王女で、私が逃げてからさほど月日は経ってないことがわかる。ただ、このオリンピアは実際に王宮に居ないはずだ。私と、王女、そして後二人の姫と四人は、悪意から逃れるために逃げたのだから。


(オリンピアはまだどこかに逃げているはず。だって、もしオリンピアが王宮にいるなら、私はとっくに見つかっている)


と、いうことは、仲間はどこかに潜んでいるということだ。



「リナ、戻ったよ!」

「お帰りなさい」

今日も変わらず疲れを見せず飛び付いてくるライを受け止め、痛いぐらいの視線を受ける。

そして、「あ、汗臭いからシャワー浴びてくる!」と走り去っていき、「いいですわね、なにもしなくていい人は」とお小言を頂く。ちなみにソルはいつもそのままシャワーに向かう。


「アマシェさんもカタリナさんもお帰りなさい」

「……」

ふい、と無視されるのももう慣れたものだ。

そして、そのまま皆を待って、食堂に向かうのが日々のルーティンだ。


「どうして先に進めないのかしら」

食事をとった後は宿の一部屋に集まってミーティングだ。クエストに出掛けない私も、ライが留めるので話を聞いている。


「なんらかの条件が達成出来てないんだよな」

「でも、あの辺りで得られる情報はもうないし……」

ライたちは今、水晶の洞窟というダンジョンをクリアしようとしている。

水晶の洞窟は、精霊の剣が眠ると言われているダンジョンで、精霊の剣を獲得するには、精霊の瞳というスキルが必要だ。それを知っているのか、知らないのか。クエストに同行しない私には判断がつかなかった。


「……何か思い当たることがあるのか?」

と、ソルがそわそわしていたのだろう私に話をふった。

「え、ええ……!町で聞いた噂ですが、ダンジョンクリアには精霊の瞳というスキルが必要ですと」

「精霊?ああ、そうか……なら、完全攻略は難しいのか」

「……そうなんですの?」

「あんた、無知にも程があるわよ。精霊は、十年前に誰の前にも姿を現さなくなった。精霊の瞳をもつ人も減ったし、持っていても精霊が居ないから見ることも出来ないわ」

十年前、と呟く。それは、私たちがこの世界から逃げた時期と同じだった。

でも、おかしい。精霊は少なくともいるはずだ。何故なら私の頭の上にすでに一匹座っているから。

精霊の瞳のスキルは衰退してしまったのか?


(違うよ、リナリル。精霊の瞳を持つものは、居なくなってしまったんだ。リナリルは、精霊の娘だもん。見えて当たり前)

頭の上の精霊は、どこか気落ちしたかのように答える。勿論この姿も声もこの場にいる四人には見えないし聞こえていないようだ。


「じゃあ、このダンジョンは明日もう一度行って取り敢えず終わりかな。精霊の剣見てみたかったけどな」

ライがそう言うと、仕方ないわね。とアマシェとカタリナが肩を竦める。

「じゃあ、明日は移動になるからリナもダンジョン行くよ」

「え、ええ。わかったわ」

そう言うと、ライは私の頭をぽんぽん叩く。「おやすみ」とソルと共に部屋を出ていった。


「リナ、何度も行ってるダンジョンだけど、ちゃんと寝てしっかりついてきて足引っ張んないでよ?」

「はい、いつもお気遣いありがとうございます」

「……リナはさ、ライのこと好きなの?」

「……はい、愛していますわ」

「愛していますだなんて、役立たずが、よく言えたものね」

カタリナのふとした質問に答えると、アマシェは気分を害したようだ。


いいじゃないですか、私はこの世界ではライと結ばれることはないのですから。


私はふう、と深呼吸してベッドに潜り込んだ。



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