線が結って解かれて
私たちの世界に正解はない。正解を決めることはできる。そしてそれを決めるのは、私たちだ。
私はその時動揺していた。鳴り響くアラーム音、至る所で点滅し続けるランプ、大声で報告をし続けるスタッフのみんな、そして幼い頃からずっと一緒にいた親友の2人の不安な顔。緊急事態の時に必要なのは冷静さとじっくり物事を考えられる環境だというのに、この司令室には音と光、衝撃が止む気配など欠片もない。こんな環境で冷静な判断をしろと言う方が無理な話である。
「報告します!防波堤全壊!波が街に来ます!」
「報告します!嵐によって住宅および高層建築物の倒壊相次いでいます!」
「報告します!住民の不安による暴動が治りません!」
本当に、酷い状況だ。AIが実装されても、彼らの行うことができることはデータの蓄積から可能な判断だけだ。データがなくては彼らは予測しかできない。しかしその予測でこの世界は守れないのだ。人間が定義できている範囲での世界を構築させることは可能なのだ。だがこの世界はそれだけじゃない。少なくとも「奇跡」と呼べるものをAIは予測できない。「奇跡」がどんな状況で発生するのかなんてAIですらわからないのだ。対して人間はどうだろう。昔から虫の知らせや第六感、勘で様々な事象をそれら以外の根拠もなしに言い当てる。
私は今まで様々な事象と対峙し、解決してきた。昔ほど勘に頼ったことはなかった。しかし身分が、地位が上がれば上がるほど、私は勘を頼ることができなくなったのだ。私の立場が勘を使うことを許してくれない。使えば私の経験、勘を活かせなくなるからだ。だから私は経験にしか活路を見出せない。仕方のないことだと最初は思った。でも今は、今は違う。凄惨な状況を前に、私は論理的な思考でこの状況を乗り越えられるとは思えない。どうすればいいだろうか。
「大丈夫だよ、どうにかできる」
右隣の親友が私を励ます。
「私たちがついている、どうすればいいのか、みんなで考えよう」
左隣の親友が2人に提案をする。
そうだ、私は1人ではない。そして最終手段だってあるんだ。この状況からは逃げてしまう結果にはなってしまうけど、彼女ならどうにかできる。
「『先生』を使おう。今しかないよ」