挟み撃ち作戦
翠は目標目掛け滑空していくが童女も負けじと応戦する。
「ちょこまかと鬱陶しい…」
無数のレーザーが襲うも翠は巧みな操縦としなやかな身のこなしで回避する。
「このままじゃ後が続かない。仕方ないわね」
翠はおもむろに鞄に手を入れると長方形の赤い箱を取り出した。この状況を打開する策でもあるのだろうか。
「後で食べようと思ってたけど貴方のやる気に免じて使ってあげるわ!」そう言って取り出したのはポッキーである。
「??!!????」。
唖然とする私を尻目に翠は封からポッキーを2本取り出すとチョコ部分を口に含んだ。「普通に食うんかい!」私がツッコミを入れると、童女は隙だらけの翠目掛けレーザーを放った。
「これで遊びはお終い…」避けることが出来ないであろう一撃が翠を襲った。
「甘いわね!」
翠は口に含んだポッキーを噛まずに取り出すと、さっきまで何の変哲も無かったポッキーが光輝き出した。
「ポッキーも使い方次第だってことを教えてあげるわ」
翠が魔法の杖のようにポッキーを1本大きく振るうとバチバチとした眩い光が放射状に現れレーザーの行く手を遮った。
「私の攻撃を打ち消した…?」
童女は驚きを隠せない様子であった。
「これで終わりじゃ無いわよ!」
そういうと今度はもう片方の光輝くポッキーを取り出し忍者のクナイのように童女目掛け投げた。放たれたポッキーは禍々しい気配を帯びて童女へ雷の如く降り注いだ。途方も無い威力で大地が揺れるのを感じた。流石の童女も怯んだ様子であった。意味がわからない。
「今よ!」
突然、私の持つ翠の携帯から声が聞こえた。
「私が注意を引いてる間に奴の背後に回り込んで」
電話なしにどうやって携帯から声を出しているのか不明だが、とにかく今は童女をどうにかしないと。
「回り込んでどうするの?」私は翠の指示を仰いだ。
「奴の武器を奪ってやりなさい!」
何を無茶なこと言ってるんだ。
「奴に隙を作るから必ずチャンスはあるわ!」
もうどうにでもなれだ。私は息を殺して奴の背後に回り込みをかけた。そうしている間も翠はポッキーを駆使し防御と攻撃をうまく使い分け童女と互角に渡り合っている。
「どうかバレないで」
翠の雷撃で動きが鈍ったところを狙って私は童女に突進をかけた。
「いける」そう思った刹那、童女は身体を捻り私の脳天にその銃口を向けた。
「?!」
恐らく童女はわざと隙を作り私を誘い出したのだろう。青い閃光が明滅する。この距離では流石に翠も間に合わないだろう。
「お邪魔虫は消えて…」
レーザーが放たれようとしたまさにその瞬間、草影から凄まじい速さの円盤が現れ、童女の武器を弾き飛ばした。
「?!、だれ…」
「俺を忘れてもらっちゃ困るなぁ?」
どこかで聞いたその中年男性の声の持ち主はニヒルな笑みを浮かべながら颯爽と相棒のルンバと共に現れた。
「勝負あったな」ジャンが得意げにそう言い放った。
「クッ…」
その時、ジャンに吹き飛ばされた童女の武器が突然爆発した。爆炎は凄まじく辺りの視界が一瞬で悪くなった。
「3人は卑怯…覚えてなさい…」
童女の気配が消えたのを感じた。どうやら逃げられたらしい。