世界が180度回る
空から掃除機が降って来た。降って来たのは流行りのコードレスで持ち運びが楽なダイソン?であった。幸い徹夜明けで頭が妙に冴えていたためか反射的に避けることができたが、頭に直撃していたら恐らく死んでいただろう。何故空からこんなものが降って来たのかと見上げた瞬間に、激痛が走った。今度は人が落ちて来たのである。避けることが出来ずモロに顔面を強打したため気が遠のきかけた。落ちて来た同い年くらいの長い白髪の女性はというと、気絶していた。よく見ると肌は白く目鼻立ちは整っているように見えたが、なんだろう、妙な服装をしている。そんなことは気にも止めず、私はその女性に慌てて近づき介抱しようした。しかし、大きくクリッとした青い目が開くといきなり起き上がり。
「ああーもう少しで連続航行時間の新記録だったのに。でも、流石400年前の塵だわ、すごい静電気」
何だか興奮している様子だった。航行時間?静電気?何なんだコイツは。私は混乱していた。空から掃除機とコスプレ?女子が落ちてきたかと思えば意味不明なことを言っている。私は何だか怖くなり、彼女に気づかれないようその場を立ち去ろうとした。しかし、頭に強い衝撃を受けたためか世界が180度回っているように見えた。恐らく立ち眩みだろう。不運にも彼女に気づかれてしまった。
「そこのあなた。びっくりさせてしまって申し訳なかったわね。お詫びに魔法を掛けてあげるわ」
そう言うと笑顔でペットボトルを取り出した。ポカリだった。魔法?ポカリ?何なんだコイツは。警戒感は高まる一方だった。しかしながら、いかんせん身体の自由がきかなかった。何せ昨晩は中間試験の前日だったし、よりにもよって次は苦手科目の物理だから徹夜で勉強していたのである。疲労は最高潮な上、顔面にヒップドロップを見舞ったのだ。一時的に身体が麻痺してもおかしくない。怪しいが飲み物でも飲んで落ち着きたい気持ちもあった。それによく見たら何処かミステリアスだがタイプの女の子だし、そこまで心配しなくても良いかと思った。それが間違いだった。
「ありがとう、申し訳ないわね」
とか言いつつ、その手のポカリを受け取ろうとした瞬間、私はファーストキスを奪われたのである。