1-2「死後観察官」
地味に切るタイミング掴めない。
「では、まず名前と年齢、そして死因を説明して下さい。」
「渡辺 承一です。68歳で、…………」
「あ、まぁ死因は話されなくても結構ですよ。」
「あ、えーと……心不全です……。」
「話してくださってありがとうございます。
……えっと……わたなべわたなべ……あ、ありました。では、そちらにお掛けください。」
「は、はい。」
『死後観察官』と名乗った青年に質問されるがまま、言われた席に座る。
発言内容に違いがあるが、病院で医師と相対しているのと殆ど進み方が同じだ。
私としては、それはそれで気が楽であるが。
「では、渡辺さん。恐らく分かっていると思われますが、ここがどういう場所か説明しましょうか?」
「いまひとつ分からない点があるので、お願いできますか?」
「分かりました。
ここ『死後観察室』は、閻魔様の裁きを受ける前に、自らの死後、現世に残した周りの人々がどうしているかを知り、憂いを取り除いて貰おうという部屋です。
そして『死後観察官』は、その部屋の管理人であり、手引きを行う存在です。
貴方が現世から去った直後から1ヶ月後までで、時間を指定する事が出来ます。
簡単に言いますとこんな感じです。何か質問は?」
「あ、はい……。具体的にどの様にして、死後の現世を観る事が出来るのですか?」
「あ〜。考え方としては、テレビドラマみたいな感じですね。『そんな、纏められたら実感が湧かない』なんて言われたらこちら側も困りますが、そうでもしなければ数十時間も観る羽目になって保たないんです。
ついでに言いますと、『死後観察官』は元々、死んで裁きを待つ人々全員の死後の現世を観ていました。しかし、そんな事は正直なところ無駄な事だったので、この様に希望制で相手自身が観れる様になったのです。
ただ、こんな事言うと結局何なんだとか言われるかもしれませんが、一応バラ読み状態で全員分観てるんです。そして、逆にこちらから出向いて、観てくださいってお願いする事もあります。
……話が逸れてしまいました。他に質問は?」
「いえ……。ではお願いします。」
「分かりました。では時間を指定して頂けますか?」
いつを観るか聞かれ、しばらく悩む。
死んだ直後は…………。私が死んだ後、いつに何があったかなんて知るわけがない。観れるのは私が死んでから1ヶ月後までの間のいつか。どのタイミングで何があるかなんて分からない。
しかし、この様なことを考えるのはどうかと思うものの、私の葬儀というものがどの様に執り行われたかという件については興味がある。
「…………決めました。私の葬儀……死んだ2日後でお願いします。」
「分かりました。
確認しますと、貴方が死んだ翌日に通夜、その翌日に葬儀が行われましたので、2日後であれば葬儀の時の様子となりますが、これで宜しいですね?」
「はい。よろしくお願いします。」
「では、あちらのテレビの前のソファへ。」
移動を促されて、私はソファに座る。
次回予告「観る前の雑談」
作者「引き延ばしてる訳じゃないです、はい。」
観次「嘘臭いなぁ〜」