1.声を失った少女
僕は意識を取り戻す。
あたりを見回す。
周りは、うっそうと生い茂った大きな木ばかりだ。
どうやらここは深い森の中のようだ。
僕は深い森の中に倒れていたらしい。
自分の後ろで小さな物音がした。
僕は驚き、すぐに後ろを振り返った。
後ろには、一人の少女が倒れていた。
年齢は自分と同じぐらいだろうか?
15、16ぐらいに見える。
見覚えがあるような…
どこか懐かしいような顔だ。
僕は眠っているように見える彼女の肩をつつき、起こそうとする。
なかなか起きないので、耳元で話しかける。
「おーい、起きないか?」
彼女は今だ眠ったままだ。
とても深い眠りに落ちている。
彼女を起こそうとしていると、だんだん人の近づく、気配がする。
こんな森の中に人がいるなんて…
鎧のこすれるようなような金属音がする。
金属の音の鳴り方からして、複数の兵士が近づいてきているのだろう。
まずい。
ここがどういう世界なのか分らないが、敵だと判断されたら僕はなす術がない。
何の武器もなく、何の防具もない丸腰だからだ。
逃げるにしても、この少女を放置するのか?
敵とも限らないし、とりあえず、話し合おう。
木の陰から兵士達が飛び出してきた。
人数三人だ。
まるで映画に出てくるような、中世の鎧姿だ。
彼らは、無言で弓を構えた。
僕は必至で叫ぶように声を出した。
「やめてくれ、僕は無抵抗だ、話を聞いて…」
問答無用で彼らは弓を発射した。
三本の弓が僕に猛スピードで迫りくる。
避けられるわけがない!
僕は死を覚悟した。