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2. 夕日に向かって

 「ああ、分かってるさ。記憶と呼べるものがほとんど無いってことだろう?」

「まあ、そういうこと・・・。だと思うのですが。」

「昨日のことは覚えてるかい?」

 私は、必死に消えかけた記憶を探し出すように考えた。

「たしか、一人でここに来て、おじさんに会って、部屋を貸してもらって・・・。」

「もうその先は寝ただけだろう」

はははっとマスターが笑う。

「外に出てごらん。お嬢ちゃんがどこを歩いてきたか分かるから。ついでに看板をドアのそばに出しておいてくれるかい?」

 店のメニューを書いた看板を運び、ドアのそばに立てかけた後、私は辺りを見回した。

 店の近くにレンガ作りの塀があって、その塀の中が街になっているようだ。塀はあまり高くなく、人の身長より少し高いぐらいで、古そうな雰囲気がする。

 そして塀は店の前を通る道とぶつかる所で切れていて門になっており、広い場所へと繋がっていた。

 その門の外には・・・。

 ただただ広い草原が広がっていた。

 昨日私はこの草原を渡ってきたんだ。


 「どうだった?」

店に戻ると、マスターが私にそう聞いた。

「私はあの草原を渡って来たんですね。」

「そうだよ。みんなそうさ。みんな東から夕日に向かって歩いて来るのさ。」

 そう言いながら、マスターは遠く、東の草原の方向を見つめていた。

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